現場作業員などに向けた作業着を中心にシェアを広げ、業界最大手にまで成長を遂げた作業着チェーン「ワークマン」。近年では、タウンユースにも使えるおしゃれなアウトドアウェアのジャンルにも進出し始め、これがアウトドアユーザーを中心に大ヒットしている。2018年には、こうしたカジュアルジャンルを中心に取り扱った新業態店「WORKMAN Plus」の第1号店もオープンし、話題を呼んだ。
だが、その一方で、ワークマンは元来の作業着を進化させることも怠っていない。なかでも2017年に登場した「GNT1001 ダブルフラップ防寒ブルゾン」(税込2900円。以下、ブルゾン)は、豊富な機能と驚きの低コストを誇り、発売当時は5万着が約1カ月で完売したという。
ネットユーザーからも大好評
もちろん、3年経った今でも大人気のこの商品。ネットユーザーからはどのような口コミが寄せられているのか、その一部を紹介しよう。
「ワークマンの防寒ブルゾン(GNT1001)、めちゃ暖かいうえに収納力がすごくて一発で気に入ってしまった」
「作業服はマジで楽なんだよなぁ…部屋着にしたいレベル」
「ワークマンの作業服が暖かくて収納もいっぱいあって快適すぎて、とうとうカバンをもたず手ぶらで出勤するようになってしまった」
「ワークマン 体も財布も 暖める」
「ワークマンの『ダブルフラップ防寒ブルゾン』、凄いなぁ こんな風の強い日でも安心」
このように、絶賛の声が後を絶たないのだ。
そこで今回は、パリへの留学やファッション企画コンサルティング会社、ファッション系のITベンチャー企業を経て、現在はファッションアナリストとして活躍している山田耕史氏に実際に着用してもらい、そのリアルな所感と、人気の秘密を聞いた。
丸々洗濯機で洗えて水切れもよし……多彩な機能に感嘆
まず、最大の特徴は、洗濯機で丸洗いできる点だと山田氏は語る。
「ワークマンに限らず、多くのアウトドアブランドでも、洗濯機での丸洗い自体には対応している防寒ウェアはあります。ですがワークマンのブルゾンは、洗ったあとがとても楽でした。なぜなら、水が溜まりがちな腰回りがメッシュ生地になっており、水切れがいいからです。
また、中綿の素材がポリエステル100%なので、速乾性も高い。他ブランドの防寒ウェアは“洗おうと思えば洗える”という商品が多いのに対し、“洗って繰り返し使うこと”をしっかり念頭に置いた商品だといえるでしょう」(山田氏)
次に、肝心の防寒性についてレビューしてもらった。
「基本的にダウンジャケットのように“保温”をベースにしたものではなく、“断風”によって体温低下を防ぐのをベースにしている印象です。
断風面で一番驚いたのは、首回りの“ダブルフラップ”でした。そもそも商品名になっているダブルフラップとは“二重前立て”のことで、一層目のファスナーと二層目のマジックテープが、二重に断風してくれる仕組みになっています。こうした構造はバイク用のウェアやミリタリー系のウェアなど、比較的高価で特殊な用途の防寒ウェアにはしばしば見られますが、ワークマンのように低コストな作業着ではなかなか珍しい印象なので、ユーザーにとって嬉しいポイントではないでしょうか」(同)
続いて、着心地はどうだろうか。
「特段悪い面はなく、スムーズに着られると思います。ただ、裏地にこれといって通気性をよくする機能があるわけでもないので、汗をかいたときに、少々ベタつくことはあるかもしれません。とはいえアウターですし、その下にシャツなどを着るのが基本ですから、ほぼ問題はないといっていいでしょう。
さらに言うと、“動きやすさ”に関しては、かなり気が配られています。特に腕は、別段ストレッチ性の素材が使われているわけではないものの、脇の下部分が動かしやすいカットに切り替えられているなどの工夫が見られ、一般的なアウターに比べて格段にスムーズです。さすがは“現場作業用”といったところでしょうか」(同)
加えて山田氏は、いかに現場作業を想定したつくりになっているのかを力説する。
「フード部分が凝られているのは特筆すべきですね。まず、ヘルメットの上からでも被れるくらい大きなサイズなのが高評価ポイント。あとは、フード自体を取り外せる“2WAY仕様”になっているのもありがたいですし、何より一番気が利いているのは、フードの先端にマジックテープがついており、フードの口をピタッと閉じられることです。
狭いところを潜ることの多い現場作業員にとっては、機械にフードをひっかけ、思わぬ事故につながってしまう危険性もありますが、このフードなら、そんな危険性を排除することができます」(同)
タウンユースには不向きなデザインだが、コスパはバツグン
では、デザイン面、コスト面ではどういう評価なのだろう。
「デザイン面は、もともと現場作業用ということもあり、やや野暮ったさは拭えません。タウンユースにも……とは言いがたいのではないでしょうか。ですが、ワークマンには『現場作業員の服をワンランクおしゃれにアップさせたい』というマインドがあるようで、デザイン性の向上に力を入れているのは確かです。
また、この性能で税込2900円という低価格を実現しているのも驚異的ですね。アウトドアの有名ブランドのアウターだと、2万円を超えるようなものもざらですし、ユニクロの防寒アウターでも1万円前後です。充実した機能の数々を考えると、コスパは非常に優れています。
以上を踏まえて総括しますと、たとえ安い値段でもつくりに手を抜かず、ユーザーに長く何度でも使ってもらいたいという、ワークマンの思いやりが見受けられる商品でした。また、このブルゾンに限らないことなのですが、カジュアル系のアイテムであってもペン差しやネームループを忘れないなど、『あくまで現場作業員に向けた商品をつくっているのだ』という誇りも強く感じられます」(同)
カジュアルアイテムでヒットを飛ばすワークマン。しかし、このブルゾンからも伝わってくるように、現場で戦う作業員と真摯に向き合う姿勢は、今なお健在のようだ。
(文=A4studio)