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新型コロナ、PCR検査抑制は日本政府の英断か…徹底的な検査で医療崩壊したイタリアと韓国

構成=編集部
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスが全世界で時々刻々と広まっている。特にイタリアでは急速に感染者が増加しており、10日には全土で個人の移動制限が発令された。この背景には、検査のやりすぎがあると指摘する声があがっている。それに呼応するかのように、検査数を絞ってきた日本の対応を評価する向きも増えている。

 イタリアでは、これまでに新型コロナウイルスの検査を5万4000件以上行ったといわれている。早期に感染者を確定させ、拡大を抑制する狙いだったが、それにより病床が満杯になり、重症者を受け入れられなくなるなど医療機関が混乱した。

 特に、感染が拡大するロンバルディア州では医療従事者の約10%が感染していると報じられており、医師や看護師の不足に拍車がかかり、感染が一気に広がったと指摘されている。そのため、引退した医師や卒業間近の看護学生まで招集しているという。

 米ブルームバーグ通信が、世界保健機関(WHO)関係者の話として「検査をやり過ぎて害を及ぼしたようにみえる」と伝えているように、軽症者まで徹底的に検査することには弊害があるのだ。韓国も同様に、大量に検査を行ったことで医療崩壊を招いている。

 日本でも、新型コロナウイルスを特定するPCR検査を広く行うべきとする主張は、多くある。確かに、感染を拡大させないためには、感染者を早い段階で特定して隔離する必要があるように思える。また、自分が感染していたら、家族など身近な人にうつさないためにも入院したいという人が多いのも当然といえる。

 だが、感染症の専門家としては、むやみやたらにPCR検査を行うべきではないというのが共通認識だという。日本感染症学会・インフルエンザ委員会委員長の石田直医師は、次のように語る。

「コロナウイルスPCR検査の感度、特異度は明らかにされてはいないが、偽陰性、偽陽性もあり得ます。つまり、軽症や無症状の人に対しても広く検査を行うことは、偽陽性者の絶対数が増えることになり、感染率がいまだ低い現在の状態では、陽性的中率が低下します。すなわち、罹患していないのに検査で陽性となる人が増えるわけです。

 そうすると、これらの人たちは必要ない隔離等を強いられることになります。現在では、陽性者は措置入院になるので、すぐに病院のベッドが埋まってしまって、重症者を受け入れられなくなります。そもそも、軽症の人は診断されても治療がありません。いずれは自宅待機になるでしょう。

 限られた医療資源を活用するためには、検査前確率の高い濃厚接触のある有症状者や肺炎例に限って検査を行うほうが合理的です。このような考え方は、臨床に携わっている医師や専門医の共通した認識です」(公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構・倉敷中央病院呼吸器内科 石田直医師)

 いまだに終息する気配を見せない新型コロナウイルスだが、各国がとった政策によって感染拡大のスピードや死亡者数には大きな違いが生まれてきている。一日も早くウイルスを制圧してほしいと願うばかりだ。

(構成=編集部)

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