画期的な薬が続出で命が救われる一方、その高額医療費を健常者が負担、国民皆保険崩壊も
厚労省は特例拡大再算定に加えて、2018年には薬の「費用対効果」を調べて薬価に反映する方法を試行することも発表しました。どれだけ延命できたか、生活の質が改善したかなどを数値化して比較するもので、英国やオーストラリアでは導入が進んでいます。今年4月には、費用対効果を分析する対象が公表されました。保険適用の医薬品7種類と医療機器5種類で、オプジーボもその対象です。
値段に対して効果が低ければ価格を下げるよう、18年度の診療報酬改定に反映させるということです。
厚労省はこれまでにも、薬剤費を抑えるために2年に1回、診療報酬改定で薬価を数%ずつ引き下げてきました。薬の特許が切れると、その成分を使って価格が安い後発医薬品(ジェネリック)を販売することができます。厚労省は、そのジェネリックの普及も促進しており、医療用医薬品に占めるジェネリックの割合を「18~20年度に80%以上」にするという目標を立てています。
逼迫する医療保険制度
しかし、日本の医療費総額は年々増加を続け、13年度には40兆円を超えました。20年前と比べると6割も増えていて、高齢化に加え医療技術の進歩などが主な要因と考えられています。さらに、患者の医療費の自己負担を所得に応じて一定額に抑える高額療養費制度の利用が大きく伸びています。13年度の全国の支給件数はおよそ5400万件で、支給額は約2兆2200億円となっています。
これらは当然、保険料や患者の自己負担では賄えず、全体の約4割を税金で穴埋めしています。団塊世代がすべて75歳以上となる25年ごろになると、医療費は50兆円を超えると予想されています。
患者の自己負担分との差額を負担する、企業の健康保険組合や国民健康保険組合など、医療保険者の財政もかなり厳しい状態です。健康保険組合連合会(健保連)の14年度予算では、1409組合のうち半数以上が赤字となっています。さらに、同年度に健保連の各組合に申請があった医療費のうち、1カ月の医療費が1000万円以上に上る申請も300件ありました。
オプジーボをはじめとした高額薬剤の使用が進めば、薬剤費が医療費全体の半分以上を占めるようなことにもなりかねません。そうなると、極端な保険料引き上げや増税も必要となるでしょうし、医療給付を抑えるために、現行の治療行為や医薬品の中から国民皆保険の対象外となるものも出てくるでしょう。その結果、当然、自己負担額も高くなります。