今年の5月10日。インターネットのオークションサイトで、千葉県千葉市の閑静な住宅街に建つ、土地面積約527平方メートル、延床面積約308平方メートル、計12部屋の豪邸が競売にかけられた。売値は756万円。
一般的な相場の約4分の1という、「超」がつくほどのお買い得価格だ。なぜこれほど安値なのかといえば、理由は単純。この邸宅は、かつて殺人事件が起こった、いわゆる「事故物件」だからだ。
事件が発生したのは、2014年1月28日。この家の住人である夫が胸から血を流して倒れているのを帰宅した妻が発見、夫は搬送された病院で死亡した。警察は殺人事件と断定したものの、いまだに捜査が続けられている状況だ。「そんな物件を買う人はいるのか」と思うだろうが、市内在住の不動産業の男性が1111万1100円で落札した。
東京・新宿にも無数に存在する事故物件
さて、この千葉の邸宅は持ち家として販売されていたわけだが、賃貸のいわく付き物件は全国各地にごまんと存在する。試しに、「事故物件公示サイト」をうたう「大島てる CAVEAT EMPTOR」内のマップで東京・新宿を見てみるといい。自殺や他殺があった建物が点在している。
ご存じの通り、通常の敷金・礼金・仲介手数料システムに則って部屋を借りると、高額な初期費用がかかる。敷・礼1カ月ずつの物件に入居する場合、合計で家賃5カ月分にもなるケースもあるため、たまったものではない。
特に、都心周辺でひとり暮らしをするには、ある程度の収入がないと困難だ。「夢を追いかけたい」という若いフリーターなどにとっては、なかなかつらいものがあるだろう。そんな、お金のない夢追い人たちにとって、事故物件は人気の存在のようだ。
13年7月。不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」に、ある事故物件が掲載されて話題となった。千葉県浦安市のアパートで、1K、約20平方メートル、バス・トイレありで立地もまずまず。賃料は2万3000円。本来の家賃は4万6000円だから半額というわけだが、その宣伝の仕方が斬新だった。
「一人暮らしなのに一人暮らしではないような感覚にさせてくれる寂しがり屋さんにオススメのお部屋です♪」
さらに、部屋の内装や建物の外観などの写真のコーナーには「オバケのQ太郎」がウィンクしている画像を添えるという遊び心も。すべてを語らずとも、“共同生活”を予感させるこの物件には、掲載と同時に入居希望を含めた問い合わせが殺到したという。
敷金礼金ゼロ、家賃は相場の3~5割引も
実際、こうした事故物件は敷金や礼金がゼロだったり、家賃が相場の3~5割引だったりするため、「住みたい」という人も少なからずいるらしい。
実は、筆者の友人で芸人志望の20代男性も事故物件に住んでいる。理由は「ネタになるから」だそうだ。しかし、今のところ、残念ながらネタになるような不可思議な現象は起こっていないという。事故物件も、意外に「住めば都」となる可能性もあるのだろうか。
(文=小島浩平/ロックスター)