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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

夫の家事時間、平均たった10分…働く子持ち女性を疲弊させる“不寛容な日本社会”

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表
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「Getty Images」より

 現在、新型コロナウイルスの影響によるテレワークで、ホッとしている働く女性たちは多いようです。ネット上でツイートが拡散された話題をひとつ。ある母親がスーパーで出来合いのポテトサラダを手に取った時、高齢男性から「母親ならポテトサラダくらいつくったらどうだ」と言われた場面を目撃し、そのツイート主は「大丈夫ですよ」と女性に言いながら、自らも2パックを手に取ったという話。たかがポテトサラダ、されどこれ、意外に調理の手間がかかるもの。社会は働く女性にまだまだ寛容ではないようです。

 私自身の経験でも、子供が小さい頃には「母親なんだから、●●くらいやったらどうか」と各方面から言われ、そのたびに後ろめたい気分になったことは数知れず。ある男性から「ベビーシッターを雇って贅沢だね」などと言われた際には、「専業主婦とは違いベビーシッターは必要、なければ仕事を捨てないといけない、仕事をしないと子供と生きていけないのよ!」と心の中で叫びながらも、「理解してもらえないだろうな、きっと」「無駄なことは言わずに、忘れよう」と自分に言い聞かせたものです。

 現在、心身ともにヘトヘトになり私のところに相談に来る女性には、いわゆる「スーパーウーマン症候群」と呼ばれる、仕事も家庭も「完璧に」こなそうとしている方が多いのです。ビジネスウーマンとしてだけでなく、完璧な良い妻、良い母であろうと努力した結果、自分の目指すレベルでの両立ができずにストレスが溜り、心や体の不調を訴えています。

「仕事が忙しく、残業もしながら朝5時に起きて子供のためにキャラ弁づくり」

「幼稚園に持たせるバッグはママの手づくりで」

「週末は子供のお稽古と家事で、あっという間に過ぎてしまい、気が付けばそのまま月曜日の朝に」

 仕事を終えると急いで帰宅、すぐに家族の食事の準備、洗濯、アイロンがけ、子供の世話、明日のお弁当の準備……と主婦の仕事も完璧にこなそうとする女性、特に30代の女性に多くみられる傾向です。もともと真面目な「完璧主義」のハイスペック女子がこんな「べき思考」で、心身ともに限界を迎えているのです。

日本女性は家庭と仕事で二重の過重労働状態

 まず、夫婦の家事時間を見てみます。以下のグラフは総務省の調査結果ですが、日本ではいまだに夫の家事時間は少ないのですが、ここではっきりわかるのは、妻が仕事を持っていようと、専業主婦であろうと、夫の家事時間はほとんど変わらず1日10分程度であること。つまり、働く女性は仕事をしながら専業主婦と同じ家事をこなしていることを示しているのがこのグラフです。

 また睡眠時間を見ても、そもそも日本女性はOECDの他の国と比較したらかなり短いことがわかるのですが、さらに仕事をもつ子育て世代の女性の睡眠時間は、先に述べた完璧主義のためなのでしょうか、たったの4時間程度であるという例もよく目にします。

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子育てハイスペック女子にみる「がんばりすぎハイリスクタイプ」

<気をつけたい5つのタイプ>

完璧主義で責任感が強い
理想が高い(仕事、プライベートも含む)
がんばり屋さん(仕事も趣味もがんばってしまう)、残業や休日もいとわず働く
まわりの期待に応えようという気持ちが強く(夫や子供、親、職場など)子供の頃から優等生タイプ
何でも自分でやろうとする。他人に頼りたくない(頼れる人がいない)

<こんな兆候に要注意>

ストレスから出やすい症状は人それぞれです。心と身体、そして行動、3つの側面から症状に気を付けましょう。

<身体の症状>

動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、食欲がない、過食、下痢、生理不順、慢性的な頭痛、肩こりなど

<こころの症状>

不安、不満、やる気がなくなる、イライラ、うつ状態

<行動の変化>

過食、飲酒・喫煙の増加、買い物の増加

<がんばるハイスペック女子へ3つの処方箋>

1.がんばる自分を許して「べき思考」から解放 

完璧主義、自責感、罪悪感から逃れる。周囲の声は「単なる意見」として捉えましょう。

2.自分のための時間を持つこと

趣味を持つのが理想。でも「そんな時間はない」と言う人が多いのですが、仕事帰りにたった10分でも、本屋、カフェなど自分がホッとできる時間を持つことで心のゆとりができます。いつも時間に追われるなかで一瞬でも自分に戻りましょう。

3.To Do リストの見直しを

「必ずやるべきこと」「やったほうがいいこと」「できたらやったほうがいいこと」に分け、優先順位を決めるましょう。その上で、すべてを自分でこなそうとせずに、まわりの人に「手伝って」と声をかけるようにしましょう。あなたのまわりの人も「頼られること」「役に立てること」をうれしく感じています。仕事では、あなたが部下を頼ることや任せることは、部下のモチベーションアップにもつながりますし、何より部下の成長を促します。

 最大のポイントは、「ストレスからの解放」です。気を張った生活を見直して、チカラを抜いて自然体で過ごすこと。好きな本を読んだり、好きな音楽を聴いたり、ゆったりとお風呂でリラックスしたり。

 まわりの協力を得て自分の時間を持ち、家事を忘れてゆったり過ごす日をつくるようにしましょう。おいしいスーパーのポテトサラダをつまみながら。

(文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表)

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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