ギャンブルや投資、消費者金融など、うかつに手を出すと大やけどを負うものは少なくないが、やけど程度では済まないのが18歳未満の青少年との交際や性的行為だ。
周知のように、18歳未満の青少年に下手に接触すると、各都道府県が定める青少年保護育成条例、通称「淫行条例」によって処罰の対象となる。最近も、44歳の岩手県宮古市市議や30歳の同県盛岡市職員、栃木県の24歳の高校教諭などが条例違反の疑いで逮捕された。今や、毎日のように「淫行」関連のニュースを見かけるほどである。
しかし、問題は、この淫行条例と民法が矛盾していること。民法では、「男子は18歳、女子は16歳になれば結婚できる」とされており、この規定と淫行条例との整合性がたびたび議論になっているのだ。
たとえば、両親の同意のもとで18歳未満の女子と結婚し、一緒に住んで結婚生活を送っているなら、性行為をしても法には触れない。では、結婚を約束していたり、真剣に交際していたりする18歳未満の女子との性行為の場合はどうなるのだろうか。淫行条例に抵触するボーダーラインは、どこにあるのだろうか。
わかりづらい「淫行」「わいせつ」の基準
淫行条例はどこからが違反となるのか曖昧な部分が多く、「アウト」「セーフ」の見極めが非常に難しい。
確かに、各都道府県で異なる条文でも、ほとんどが「淫行(みだらな行為)」と「わいせつ行為」を禁止している。だが、そもそも淫行やわいせつ行為とは、どこからどこまでを指すのか。法律に詳しくない人にとっては、違反となる基準がわかりにくいのが実情だ。
そこで、児童性犯罪や児童ポルノの問題に詳しい弁護士の奥村徹氏に聞いたところ、淫行の定義は次の判例にあるという。
「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である」(福岡県青少年保護育成条例違反被告事件 最高裁判所大法廷判決 昭和60年10月23日)
この「性交類似行為」は判例上、「異性間の性交とその態様を同じくする状況下」における、「性交を模して行われる手淫・口淫行為、同性愛行為など」「実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為」と説明されている。性交をしていなくても、18歳未満の女子に対し「乳房、性器を弄ぶ」「性器に陰茎を押し当てる」などの行為をすれば、性交類似行為とみなされるという。
奥村氏は、「相手に直接接触しない限りは、淫行になることはありません」というが、逆にいえば、18歳未満の女子に直接接触すると、それだけで淫行になる可能性があるわけだ。