そして、わいせつ行為のボーダーラインはさらに厳しい。わいせつ行為は、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」(最高裁判所判決 昭和26年5月10日)という判例に基づいて定義されている。
「そのため、わいせつ行為については、裸の画像の送り合いなどのように、相手に直接触れるような行為でなくても該当する可能性があります」(奥村氏)
今年8月には、富山県の中学校教諭が18歳未満の女子にキスをした疑いで逮捕された例もある。性行為とまではいかなくても、当局が「普通人の正常な性的羞恥心を害している」と判断すれば、淫行条例違反の容疑で逮捕された挙げ句、新聞などで名前を報じられてしまう危険性があるわけだ。
「婚前交渉」「真剣交際」ならセーフ?
そして、淫行条例をさらにわかりづらくしているのが、民法の規定との矛盾だ。民法では、親の同意があれば結婚できる女性の年齢の下限が16歳と規定されている。このため、18歳未満と性交渉に及んでも「婚前交渉」や「真剣交際」なら許されると思われがちなのだ。
ところが、奥村氏によれば、本人同士の合意があっても、保護者の同意がなかったり交際期間が短かったりすれば、条例違反になる可能性があるという。
「淫行条例に抵触しているか否かの判断要素は、都道府県ごとに少しずつ異なります。とはいえ、主に考慮されるのは、『年齢差や、女性が婚姻可能年齢に達しているかどうか』『性行為に至る過程(会っていきなり行為に及んでいないか、立場の利用がないか、酒・薬物を伴っていないか)』『交際の態様(保護者が了承しているか、人格的結合があるか)』など。そのため、当事者が『婚前交渉』『真剣交際』と思っていても、それで足りるとは限らないのです」(同)
条例違反になるか否かは相手の態度次第?
もっとも、中には淫行条例の壁を乗り越え、18歳未満と男女の関係になって結婚に至った人も存在する。16歳の女子と真剣交際の末に入籍したという梨田貴司氏(仮名)は以下のように語る。
「今の妻とは、私が30代で彼女が14歳だった約10年前に出会い、入籍したのは彼女の16歳の誕生日でした。妻が14歳のころから千葉県内で同棲し、当然『婚前交渉』もありました」