正月以外は、かまぼこが食卓に上る回数は減ってきておりますが、筆者はヘタに解凍したマグロの刺身よりも、おいしいと思っています。そば店で、注文したそばが出てくるのを待っている間、板わさをつまみにして日本酒のぬる燗を飲むと「日本人でよかった」としみじみ思います。
かまぼこは、魚のすり身でできています。魚を三枚に下ろして、すり鉢ですって塩を混ぜ、板の上に乗せて蒸し上げれば完成です。
製造方法が単純な製品ですので、かまぼこの味、食感は魚の種類、すり身の製造方法で決まってしまいます。すけそうだら、鯛、グチ等の魚が主に使用されています
鮮度、品質の良いすり身を使用すると、プリプリのかまぼこができます。逆に、品質の悪いすり身を使用すると、食感が悪くなりやすいのです。その場合、卵白、小麦粉、加工デンプンなどを使用して食感を良くするのです。
しかし、鮮度の良いすり身を使用したかまぼこと、デンプン等を加えたかまぼこは、食感やうまみが大きく異なります。おいしいかまぼこを食べるためには、値段よりも原材料表示をよく確認して、でんぷんや卵白の含有率が低く、加工デンプンが配合されていない商品を選ぶことが大切です。
ちなみに、かまぼこが一番売れるのはおせち料理を準備する年末です。かまぼこメーカーは、10月くらいから正月用のかまぼこを製造し、凍結して年末まで保存します。その製品には、解凍後の賞味期限をすでに表記してあります。
凍結、解凍を経たかまぼこは、凍結していない物よりも食感が劣ります。正月にしかかまぼこを食べない方は、あまりおいしくない食べ物と認識しているかもしれません。正月用のかまぼこは、1000円以上する商品がほとんどです。スーパーマーケットの売り場で購入するときには、「このかまぼこは、できてから凍らせていませんか」と必ず確認してください。凍らせたかまぼこでは、ぼそぼそして本来のおいしさを味わうことができません。
クリスマス前までに購入すると、製造されてから長期間凍結されていないおいしいかまぼこが、安く手に入る可能性が高いのです。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所)
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