睡眠障害を訴える患者の話を聞いてみると、「なかなか寝付けない」というタイプの不眠が圧倒的に多く、次いで「すぐに寝付けるが、就寝から数時間で目が覚めて、その後は寝付けない」「朝方早く目が覚めてしまう」という声が多い。一般的に睡眠障害には、以下のタイプがある。
・入眠困難…寝つくのに30分以上かかる。
・中途覚醒…夜中に繰り返し目が覚め、再び寝つくのに時間がかかる。
・早朝覚醒…起きる意思がないのに早朝に目が覚める。
・熟眠障害…一晩眠っても疲労感が残る。
睡眠障害は、生活習慣病を招く一因でもあり、症状を悪化させるともいわれる。また、慢性的な睡眠不足は、疲れやすいだけなく、集中力を低下させ仕事への影響も大きい。ビジネスパーソンとして戦い抜くには、「質の良い睡眠」が不可欠である。質の良い睡眠というと、諸説あるなかでも「最適な睡眠時間は7時間」という説が広く浸透しているようだ。しかしながら、最適な睡眠時間には個人差がある。最近では、「分割睡眠」という睡眠習慣が話題になっている。
分割睡眠とは
分割睡眠とは、1日のうちで短い睡眠を何度かに分けて取るというものである。実は、筆者も分割睡眠を実践しているが、それはもともとショートスリーパーだったことに起因する。筆者は疲労を感じた時などに、たとえば8時間といった長い睡眠を取ろうとしても、決まって4時間程度で目が覚めてしまう。そして、いわゆる「二度寝」をしても疲れは取れない。
試行錯誤を繰り返すうちに、4時間程の睡眠を取り、あとは疲れを感じた時に15~20分程度の仮眠を取る方法にしたところ、疲労感が軽減することに気づいた。この方法が筆者にはもっとも適している睡眠法であり、活動時のパフォーマンスが向上するのだ。ただ一点、分割睡眠を行う上で留意しているのが、睡眠時間を「午前1時から5時までの睡眠」とすることである。この時間に深い睡眠を取ることが大切なようだ。
睡眠薬より自然な眠り
不眠症とまでいかなくとも、「夜、眠れない」ということに焦燥感を持つ人が多いが、時には眠れない日があるくらいは、正常といえるだろう。そんな時、睡眠導入剤や睡眠薬に頼ることもあるだろうが、一方で「睡眠薬は癖になるのではないか」と気にしながら服用している人が多いもの事実である。
睡眠薬は、ハルシオンに代表される「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」が汎用されているが、耐性(薬に慣れると効きにくくなること)が起きやすかったり、長期間服用を継続することで依存性が生じることは否定できない。
できれば、自然な睡眠を心がけたいものである。しかし、質の良い睡眠は人によって異なり、年齢やライフスタイルによっても変化する。そのため一概にはいえないが、適正睡眠は7時間といった固定観念にとらわれず、一度分割睡眠を試してみる価値はあるかもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)