今年の秋頃、健康ゴールド免許が話題になった。増大する医療費抑制の問題は避けて通ることができないだけに、机上の空論では済まされない。
10月、自民党は、定期検診などで健康管理に努めた人を対象として、医療保険の自己負担を3割から2割へ引き下げる「健康ゴールド免許」制度の導入を提言した。つまり、「病気になってから治療する」だけでなく、人々が「病気にならないように」自助努力することを支援していくというものだ。
医療介護費用の多くは、生活習慣病、がん、認知症への対応である。これらは、普段から健康管理を徹底すれば、予防や進行の抑制が可能なものが多い。しかし、現行制度では、健康管理をしっかりやってきた方も、そうではなく生活習慣病になってしまった方も、同じ自己負担で治療が受けられる。これでは、自助を促すインセンティブ(努力を促すための誘因)が十分とはいえない。
健康診断を徹底し、国民に早い段階から保健指導を受けさせるようにして、健康維持に取り組んできた人が病気になった場合は、自己負担を低くすることで、自助のインセンティブを強化すべきだ。
運転免許証では優良運転者に「ゴールド免許」が与えられる。医療介護でも、IT技術を活用すれば、個人ごとに検診結果履歴等を把握し、健康管理にしっかり取り組んできた方を「ゴールド区分」にできる。いわば医療介護版の「ゴールド免許」をつくり、自己負担を低く設定することで、自助を支援すべきだ。もちろん、自助で対応できない方にはきめ細かく対応する必要がある。
以上がその内容の一部だが、自分の健康は自分で守ることをテーマにしている筆者にとって、健康ゴールド免許という提案はなかなかおもしろいと思った。しかし、検診を重視することには疑問を持つ。検診の結果、行われる保健指導に力点を置く必要があるからだ。
例えば検診の結果、「もっとからだを動かしましょう」「食事に注意して」という程度の保健指導が行われても、それは大して意味がない。その人別に細かい指導を行い、それがきちんと実行されているかというチェックが行われなければならない。
かつて、病院で食事指導を受けたとき、管理栄養士に「次回の検査のときに、検査結果を見せてください。検査結果を見れば、食事指導を守ったかどうかがわかりますから」といわれ驚いたことがある。しかし、これが重要なのだ。
状態を把握して指導を行い、それができているかをチェックする。こうした作業がなければ、病気を予防したり、くいとめたりすることはできない。
健康診断だけでは不十分
健康ゴールド免許について、自身の健康管理として「誰もがスポーツジムに通えるわけではない」といった批判があるが、健康管理とは何もジムに通うことではない。自分のからだの状態を知ることが最初だ。
たとえば血圧は、健康診断に行ったときに測ってもらったり、医療機関にかかったときに測ってもらったりしているだけでは、自分の血圧を知っていることにはならない。血圧は自宅で毎日測らなければ意味がない。体重も同様で、毎日決まった時間に測っていれば、体重の変化を自分で知ることができる。ダイエットも成果が確認できる。運動にしても、歩数を毎日調べることで、体をどのくらい動かしているかがわかる。
からだの数値や活動状況を数字にして見えるにようにする。これが一番簡単でお金のかからない健康管理である。自分で自分のからだを守るために、これらのことは欠かせないからだ。
健康ゴールド免許制度も、これくらいの内容であれば、大いに納得できる。単なるお題目を並べるだけではダメだろう。
しかし、どれだけ自己管理をしていても、病気にならないという保証はない。生老病死は、生きているわたしたちの宿命なのだから。
【毎日自分で取り組むべき健康管理項目】
血圧管理
ウォーキング管理
体重管理
食事管理(塩分の摂取を減らす)
食べものの知識と管理
噛む回数をチェックする(30回噛めたら○をつけるなど)