今秋、日本各地でクマに襲われる被害が相次いでいる。今年9月までのクマ出没情報は全国で1万3000件以上に及んでおり、過去最多となっている。山中のみならず、石川県加賀市では大型商業施設に入りこむなど、人とクマの生活エリアの境界線がなくなってきている。
日本だけではない。アメリカでもクマの出没は日常的だ。
「今年9月、うちの庭にいたクマだよ」と写真を送ってくれたのは、コネチカット州ハートフォードに住む筆者の弟だ。彼の家は森が多いアパラチア山脈から10キロほどの場所にあり、ニューヨークまでは車で2時間。青森県と同じ緯度の地域で、冬眠から覚めたクマが食料を求めてやってきたという。
クマは30キロ以上先のニオイを嗅げるため、食料が不足した森からニオイを頼りに街に出てきたようだが、まるで野良猫のように出没するというから驚きだ。
「うちの近所のゴミ箱を漁りにきたようだね」と弟が筆者のLINEに送ってくれた写真を見ると、写っているのはブラックベアーという種類のクマだった。体長140センチ、体重はおよそ300キロ。通常は臆病な性格だが、人間に慣れると「怖くない」と学習するため、人を襲うこともあるという。個体の経験値により、獰猛さに差があるようだ。
「通常は人を襲ったりはしないけど、庭掃除をするときは、念のためベアスプレー(クマに強烈な痛みを与えるスプレー)を持参しているよ。危険なのは、子グマと一緒のときだね。子どもを守ろうと母親が襲ってくることがあるから、うちの子どもたちにも絶対に近づくなと言っているよ」(弟)
子グマを見かけたら、その近くには母親がいるため、絶対に近づいてはいけない。クマが襲ってきたら、スプレーをまくか「うつぶせになって顔と腹を守り、後頭部に手を回してガードする」という。
限界を迎えている自然破壊
日本では、各自治体から「クマを射殺した」という報道をやめてほしいとの要請が出ているそうだ。電話やネットで「かわいそう」という非難が相次ぐためで、猟友会の人たちは射殺をしたがらないそうだが、人が襲われる危険性がある以上、やむを得ないことだろう。ましてや人間は牛や豚、魚といった生き物を殺して食べているのだ。
もうそろそろクマは冬眠に入るが、異常気象により暖冬になると、冬眠すらしなくなる可能性があると言われている。今年7月に発生したオーストラリアの史上最悪の山火事も、地球温暖化が原因である。人類が散々行ってきた自然破壊は限界にきている。どこかでストップをかけねばならないと、多くの人が感じているはずだ。