すがすがしい季節になってきました。春から夏にかけてスーパーマーケットや八百屋さんへいくと、初物が所狭しと並ぶ光景を目にするようになります。
「初物七十五日」という諺があるように、初物は縁起がよく寿命が75日延びるといわれています。ご存じのように、初物とは、野菜、フルーツ、魚などの旬のはしり、出始めのものをさします。そして、これから初物は旬を迎えます。旬を迎えた食品は、旬を外れたものと比べて栄養価が高く、栄養成分の量が明らかに異なります。
もちろん、おいしさも比べ物になりません。たとえば、夏の野菜のひとつ、ピーマンやトマト。旬をむかえると、1年のなかでもβカロテンやビタミンC、ファイトケミカルなどが豊富になります。ビタミンEも含まれています。夏にむけて欠けることなくとりたい栄養素です。
なぜなら、βカロテンやビタミンC、ビタミンE、ファイトケミカルは、抗酸化物質とも呼ばれ、体内に発生する活性酸素を無害にする働きがあるからです。その働きを、抗酸化作用といいます。
ファイトケミカルは、野菜などの色素、香りなどにふくまれるものです。トマトであればリコピン、ピーマンであればクロロフィルが挙げられますが、そのほかにもたくさんの種類が含まれます。
活性酸素は、体内で細菌やウイルスからカラダを守る良い働きがあります。人が酸素を吸って呼吸している限り、活性酸素は生まれます。吸った酸素の1~3%ぐらいは、活性酸素に変わるといわれています。
ところが、増えすぎるとカラダの組織を酸化させる働きがあります。カラダの組織が酸化すると、病気を引きおこしたり、老化が早まったりします。
体内で活性酸素が増えすぎる原因として、紫外線、多量の飲酒、喫煙、ストレスなどが考えられます。また、疲労感やシミは活性酸素が原因とされています。これからの季節、どんどん紫外線が強くなっていきます。暑さもストレスになります。そのため、カラダのなかで活性酸素の影響を受けやすくなっていきます。だからこそ毎食、旬の野菜を食べて活性酸素の害からカラダを守りましょう。
色の異なる野菜を一緒に食べる
しかし、野菜の食べ方には気をつけなくてはいけないことがあります。もし、いつもトマトばかり、ピーマンばかり、1種類の野菜しかとらないという方は、残念ながら野菜の持つ抗酸化作用の働きが長続きしない可能性があります。
その理由として、抗酸化物質はネットワークをつくってお互いに協力して働くためです。たとえば、ビタミンCとビタミンEは一緒にとることで働きがパワーアップします。また、抗酸化物質は力を発揮する場所が各々異なります。ビタミンCは、水溶性のため細胞膜の外で働きます。βカロテンとビタミンEは、脂溶性のため細胞膜の内部で働きます。ファイトケミカルは、脂溶性と水溶性と両方の性質を持ち合わせたり、血中で働いたり、働きがさまざまです。
私のおすすめは、食事のときに複数の野菜、色の異なる野菜を一緒に食べることです。野菜のもつ抗酸化作用が幅広い範囲で長く持続します。
これからの季節、積極的に旬の野菜を食卓に取り入れ、健康を阻む活性酸素の害からカラダを守りましょう。
(文=森由香子/管理栄養士)