ラジオを聞いていると、「これからの紫陽花の季節、季節の天ぷらに紫陽花の花が置いてあって、葉も天ぷらにするとおいしそうですね」と聞こえてきました。
私はラジオ番組宛てにメールを打って、「紫陽花を食べると、吐き気、めまいなどを起こすので食べないようにすぐに放送してください」と伝えました。
水仙をニラと間違えて、中毒になる事例もよく聞きます。庭にニラを植えていて、近くに生えている水仙と間違えて使用してしまうといった事故です。ニラと水仙は、においをかげば簡単に判断することができます。
小学校からの家庭科の時間で、身を守るために、食べることのできない植物を覚え、間違えやすい植物名を覚えるといった、最低限の生活ができる知恵を教育する必要があるのです。
現状では、小学校の家庭科で食中毒を起こす食材を使用することはないそうです。まして、魚を捌いて刺身にすることは、学校教育の中で身につけることはないと思います。鮮度のいい魚を、釣ってから刺身にするまで安全に行えるようにする教育が必要だと思います。
刺身で食中毒を起こす原因菌の腸炎ビブリオは近海に多く住み、水温摂氏20度以上になると活発に増殖します。また、濃度3%前後の塩水で最も増殖します。近海で釣れる魚のうろこには、腸炎ビブリオが多く付いている可能性があります。
夏の海温は20度を超えています。魚の体温も20度を超えているので、釣った瞬間に冷却する必要があります。おいしい刺身にするためには、生きているうちにえらを取り、血抜きを行い、氷で冷やすと安全でおいしい刺身にできます。
調理するまで、魚の全身が氷につかって冷えていることが大切です。
うろこの付いた魚を処理するときには、真水できれいに魚を洗い、使用するまな板、包丁もきれいに洗わなければなりません。一番大切なのは、うろこを取る場所と、刺身を切る場所を分けることです。知識が少なかった1975年以前は、同じまな板で魚のうろこを取り刺身を切っていたため、腸炎ビブリオによる食中毒が多く発生していました。知識が広まり、厨房の冷蔵設備が整ってきたことで発生数は減少しました。
この菌の特徴は、非常に増殖が早いことです。最適の条件下では8分に1回の速さで分裂します。そのため、魚を処理するときには、素早く行うことが必要になります。
このような、先人が身をもって積み重ねてきた知恵を学べる環境を整えてほしいものです。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)
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