生ネギを食べた後の“体臭”が気にならなくなる方法とは?血行促進で風邪の症状緩和の効能も
「葱白く 洗ひたてたる さむさ哉」松尾芭蕉
この句の季語は「さむさ(寒さ)」と「葱」で12月です。葱は白い部分の多い関東の葱(ネギ)のことで、この俳句の中では「ねぶか(根深)」と読みます。芭蕉が現在の岐阜県垂井を訪れたときに、由緒あるケヤキの木の下の泉で葱が洗われているのを見て詠んだ句です。
冬をイメージする色は? と問われれば、多くの人が白と答えるのではないでしょうか。芭蕉は、その冬の白のイメージと葱の白さを重ね合わせたのです。芭蕉は奥の細道紀行の2年後の元禄4年(1691年)に垂井の本龍寺を訪ね、そこでしばらく冬ごもりをしました。このときに芭蕉のお気に入りとなったケヤキは現存しており、岐阜県指定の天然記念物となっています。現在、樹齢約800年で、高さ約25メートルまで成長したケヤキの木の下には、この句を刻んだ石碑が建てられています。
生ネギの匂いを消す簡単な方法
ユリ科ネギ属には500種類以上の植物があり、温暖地帯北部が原産です。このうち、食用にできるものは20種類程度ですが、いずれも古くから世界各地で愛された野菜です。国を追われた古代イスラエル人の悲嘆を綴った『旧約聖書』にも「エジプトでは魚をいくらでも食べられたし、キュウリやメロン、ネギやタマネギやニンニクが忘れられない」(民数記11章)と記されています。
ネギ科の植物のほとんどは地下部分を食べます。地下部分は成長に必要な栄養分を蓄えています。イモ類がエネルギーをデンプンで蓄えるのに対し、ネギ類は糖鎖として蓄えるので、時間をかけてゆっくり加熱すれば糖に分解され、甘みが出て、とてもおいしくいただけます。
一方で、生のネギには独特の刺激がありますが、これは土壌中から栄養として吸収した硫黄を使った防御機構によるものです。本来は虫にかじられて細胞が破壊されたときに放出されるものですが、みじん切りにした際にも同様に細胞が破壊されるので硫黄化合物が放出されます。これらの物質には安定して存在できる時間が短いものが多く、刻んで時間がたつとともに刺激は風味に変わっていきます。
なお、ニンニクもネギ科の植物で、生のネギを大量に食べたときとニンニクを食べたときは似た体臭を発しますが、これは硫黄化合物成分がよく似ているためです。ただし、量は大きく異なり、ニンニクにはネギの100倍以上の量が含まれています。生ネギを食べたときの体臭が気になる場合は、刻んだ後に水洗いすると硫黄化合物が流れ去って匂わなくなります。
匂いの原因は硫化アリルという化学物質の混合物で、硫化アリルに含まれるアリシンという成分には、血行を促進し風邪の症状を緩和したり、胃腸を刺激して消化吸収をよくしたりする効能があるとされています。また、刺激臭を逆手にとって、魚・肉料理に使用して生臭さを消す役割も担います。
肉類を減らすだけでは健康は保証されない?
健康維持のために肉食をやめ、菜食(ベジタリアン)に切り替える人は少なくありません。また、ベジタリアンにはならなくても、肉を食べると太って健康に悪いと思い込んでいる人も多くいます。しかし、野菜を摂取する際もバランスの良い食生活が重要であることが、ギリシア・ハロコピオ大学の研究から明らかになりました。
この研究では、肥満でありながら基礎疾患のない146人の食生活に関するアンケートをもとに、156種類の食品と飲料の摂取状況を10年間追跡調査しました。
10年間に、調査対象者のほぼ半数が高血圧、脂質異常症、高血糖を発症しました。そこで、発症・非発症と摂取食品の関係について調べたところ、健康を維持した人たちは、全粒穀物、果物、ナッツ、オリーブオイル、コーヒーなどを好む傾向があり、未加工野菜食品が多く含まれる傾向がありました。一方、疾患を発症した人たちには、果汁飲料、加糖飲料、精製穀物(白パンやパスタなど)などの加工食品を摂取する傾向がみられました。
研究者らはこの結果を受け、一言で植物性食品を摂取するといっても、どのような野菜をどのような加工をして摂取するかによって、健康に寄与するのか、基礎疾患を発症するのかが分かれてしまい、肉類を減らすだけでは健康は保証されないと説明しています。やはり、健康にはバランスの良い食品の摂取が重要なようです。
日本食において、ネギは未加工で食べられる野菜の代表です。ちょっと食後の匂いが気にはなりますが、これから風邪のはやる季節ですし、積極的に摂取したい野菜のひとつです。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)
【参考資料】
『マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-』(共立出版/Harold McGee 著、香西みどり監訳、北山薫、北山雅彦訳)
「民数記日本語版」
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