誰もが子どもの頃に一度は飲んだことがあるあの“甘い飲み物”が、なぜかバカ売れして生産中止に追い込まれるという現象が起きている――。
茶色い粉末を牛乳に混ぜて飲む「ネスレ ミロ」(ネスレ日本)。サッカーボールを蹴る男性の姿がトレードマークの緑色のパッケージで有名だが、スーパーマーケットなどで見かけて懐かしさのあまりつい手を伸ばしてしまう人もいるのではないか。
そんな「ミロ」の3製品が「安定供給の継続困難」を理由に販売が中止されることが8日、製造元のネスレ日本から発表され、話題を呼んでいる。
11月23日付「マネーポストWEB」記事によれば、7月にTwitter上に投稿された「貧血の皆さまー。ミロ飲んでみてくださいー! 鉄分が平均の1/7しかないと指摘された私でも、ミロ飲んだら平均値になりましたー!」というコメントがネット上で拡散され、鉄分不足による貧血に悩む女性たちの購入が増えていたという。
「ミロ」は鉄や各種ビタミン、カルシウムなどがバランスよく含まれた栄養機能食品であり、商品の公式サイトには「『ミロ』1杯分には、1日に接種する鉄の目安の44%が含まれています」と明記されている。
ネット上には「ミロ」を求めてスーパーを数店舗ハシゴしたが入手できないという声や、販売中止を嘆く声がみられるが、当然ながら「ミロ」以外にも鉄分を多く含んでいる食品は多数存在する。そこで、管理栄養士の森由香子氏に効率よく鉄分を摂取する方法について聞いた。
鉄を含む食品は豊富
鉄不足を心配している女性たちが、鉄補給のため「ミロ」購入に殺到し一時販売中止になったと聞きます。「ミロ」は牛乳を注ぐだけで手軽に鉄の補給ができる美味しい飲み物ですので、人気が高まったのでしょう。
鉄が不足し欠乏することにより、ヘモグロビンの合成がうまくいかなくなり起こるのが鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血は、食事摂取量の低下、食事内容の偏りから体内への鉄の供給量、吸収の低下などで体内の鉄量がマイナスに傾くことで起きます。
その改善には栄養食事療法が基本になりますが、注意したいのは鉄の補給だけすればよいという単純な話ではなく、十分なたんぱく質やエネルギーの補給も必要だという点です。さらに、食品中の鉄の形態も知っておくべきです。
鉄は2種類あり、たんぱく質と結合したヘム鉄と、それ以外の非ヘム鉄が存在し、ヘム鉄はそのまま吸収されますが、非ヘム鉄はビタミンC(野菜やフルーツ)やたんぱく質(肉や魚)がないと吸収されにくいのです。
ヘム鉄は、獣肉類、内臓およびレバー製品、魚類(特に血合部分)に含まれていますが、吸収が良いとされていても吸収率は15~25%と意外と低いです。
非ヘム鉄は、卵類、貝類(シジミ、アサリなど)、豆類(大豆、あずき、ココアなど)、緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜など)、海藻類(ひじき、のりなど)で、吸収率は2~5%とかなり低いのです。しかし、いっしょに肉や魚のたんぱく質をとることで吸収が高まります。非ヘム鉄食品は、単独では吸収されにくいのです。
鉄の効果的な摂り方としては、1食ごとに動物性食品を利用して十分なたんぱく質量を確保し、付け合わせにビタミンC含有量の高い野菜、フルーツ・フルーツ果汁をとれば、鉄を効果的に摂ることができます。
飲み物であれば、牛乳に抹茶や青汁をミックスすれば、鉄、ビタミンC、たんぱく質、カルシウム、ビタミンDも同時に摂ることができます。
【ヘム鉄が含まれる動物性食品】
豚レバー50g 6.5mg
鶏レバー50g 4.5mg
牛肩ロース赤肉80g 1.9mg
和牛ヒレ肉80g 2.0mg
和牛もも肉80g 2.2mg
かつお100g 1.9mg
まぐろ脂身100g 1.6mg
ぶり100g 1.3mg
まいわし(1尾)60g 1.1mg
わかさぎ(2尾)50g 0.4mg
【非ヘム鉄が含まれる食品】
アサリ水煮缶25g 9.45mg
生ガキ(むきみ4個)50g 1mg
干しひじき5g 2.8mg
もずく50g 0.4mg
切り干し大根10g 1.0mg
糸引き納豆(1パック)50g 1.7mg
ほうれんそう(1束)200g 4.0mg
そば200g 6mg
がんもどき(1個)80g 2.9mg
このように、「ミロ」のほかにも鉄の補給ができる食品はたくさんありますし、ここに紹介した食品以外にも鉄は多かれ少なかれ含まれています。しかも、農畜水産食品には、鉄など合わせ少なくとも30種類以上の栄養成分が含まれていますから、体に及ぼす健康効果は、はかりしれません。
「ミロ」が手に入らない場合にも焦るのは不要なのです。これを機に食生活を見直してみましょう。
(文=編集部、協力=森由香子/管理栄養士)