コロナワクチンは接種すべきか…女性のほうがリスク高い?アレルギー歴ある人は要注意
新型コロナウイルスの感染拡大に怯える日々が1年を超えた。平穏な日々へと戻るには数年を要するとの見解もある。14日、厚生労働省がファイザー社の新型コロナウイルスのワクチンを正式に承認し、今週中にも接種が始まる予定だ。このワクチンが状況を大きく変えることに期待したい。一方で、通常10年以上を要するワクチン開発が、わずか1年余りで行われたことで、その安全性への不安を前面に押し出す報道もあり、「ワクチン接種を希望しない」という声も少なからず聞かれる。
しかし、ワクチンこそが我々人類と新型コロナウイルスの戦いに勝利する強力なゲームチェンジャーである。海外ではすでにワクチン接種が進められており、それに伴う有害事象についても報告されているが、その内容は不安を抱くほどのものではない。
米CDC(疾病予防管理センター)は、モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン初回接種について、ワクチン有害事象報告制度(VAERS)によって報告された有害事象を発表している(報告期間:2020年12月21日~2021年1月10日)。
・初回接種総数…404万1396件(女性61%、男性36%、不明3%)
・有害事象…1266件(0.03%)
重度のアレルギー反応、108件(うちアナフィラキシー10件)
非アレルギー反応、43件(掻痒感、発疹、口や喉の痒み、息苦しさ、呼吸器症状など)
・死者数 0件
有害事象が報告されたうち80%が女性であり、女性は男性に比べてワクチン接種後の有害事象が起きやすいのではないかと考察されているが、初回接種したのは女性が多い点を考慮すべきだろう。
【アナフィラキシー10件の詳細】
・女性100%
・年齢:31~63歳
・発症までの時間:中央値7.5分(9人は15分以内、1人は30分後)
・処置:エピネフリン筋肉内注射、6人は入院、ICUや気管挿入を要した
・既往歴:9人にアレルギー歴あり(薬物6人、造影剤2人、食物1人)
【非アレルギー反応の詳細】
・女性91%
・年齢:22~96歳
・発症までの時間:中央値15分
・既往歴:26人(60%)に食物や薬物に対するアレルギー歴あり
モデルナとファイザーのワクチンの疫学的特徴は類似しており、ファイザーのワクチンも初回接種では女性の割合が3分の2を占め、女性に優位的にアナフィラキシーが起きたとの報告がある。どちらのワクチンでも、アナフィラキシーを起こした人にはアレルギー歴もしくはアナフィラキシー歴があった。
この結果からも、過去にアナフィラキシー歴がある人や明らかなアレルギーがある人は、接種前の問診で医師に伝え、接種後は十分な経過観察を行ってほしい。
ワクチン接種のガイダンス
有害事象の報告を踏まえ、CDCはワクチン接種のガイダンスを示している。
(1)ワクチン接種可能かどうか、禁忌や注意事項などのスクリーニングを確実に行うこと
(2)アナフィラキシーに備え訓練された人員を確保しておくこと
(3)接種後に一定の観察期間を設けること
(4)万が一、アナフィラキシーと思われる事象が発生した場合は、エピネフリンの筋肉注射で対応すること
(5)初回接種でアレルギー反応があった人は、追加接種を受けるべきではない
高齢者、糖尿病・心不全・透析等基礎疾患がある人、免疫抑制剤や抗がん剤等の投与を行う人、妊婦等のハイリスク群が感染した場合、重症化率、死亡率は高い。ワクチン接種率拡大がパンデミックコントロールの鍵になり、命を守ることになる。危惧される有害事象よりも、その効果のメリットを優先すべきである。
日本でも、いよいよ医療従事者のワクチン接種が始まるが、有害事象のモニターをしっかりと行い、その後の一般国民へのワクチン接種が安心して行えるよう、情報を国民と共有してほしい。また、ワクチン接種に不安がある人ための相談窓口等を充実させるべきだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)