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家事代行サービスが見た“片付けられない人の共通点”とは?大量の掃除用品、謎のこだわり

文=谷口京子
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「gettyimages」より

 掃除や洗濯、料理などさまざまな家事を代わりにしてくれる「家事代行サービス」。近年主流なのは、ひとつの家庭に専属で雇われる家政婦ではなく、家事代行会社を通して複数の家庭からオファーを受けて、数時間単位で作業をするサービスだ。

 2020年には、キャリアウーマンが家事代行を利用するドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)がヒットし、サービスの認知度を上げた。ドラマのように依頼主と恋愛関係になるケースはさすがにフィクションだが、ドラマ以上に過酷な現場も多いという。現役の家事代行スタッフに、その実態を聞いた。

「利用者=富裕層」のイメージは間違い?

「家事代行サービスは、その名の通り、ご家庭の家事を代行するサービスです。食材を買って数日分の食事をつくり置きする『料理代行』と、掃除をメインに行う『掃除代行』があり、どちらか一方を頼む人もいれば、両方を依頼されるケースもあります。最大で1日3軒回る日もありますね」

 そう話すのは、3年ほど前から家事代行サービスのスタッフとして働くAさんだ。“裕福な家庭が家事代行サービスを利用する”というイメージが強いが、Aさんは「すべてのお客様が富裕層というわけではない」と話す。

「うかがうお宅は千差万別。豪邸もあれば、タワマンの上層階、アパートのワンルームもあります。もちろん本人の収入も関係あるとは思いますが、『コストをかけてでも家事を外注した方がメリットがある』と感じている人が利用している印象が強いですね。家事が得意な人は、たとえ裕福でも代行を頼まないと思います」(Aさん)

 現在、Aさんが担当している世帯は20~30代が中心。20代は仕事が忙しいビジネスパーソンの男性、30代は子育て世代が多いという。

「地方と都心では状況が違うと思いますが、若い人ほど家事代行への心理的ハードルが低いのかもしれません。子どもの頃に『家事を他人に外注するのは恥ずかしいこと』と教えられた人は、利用に踏み切れない場合もあると思います。高齢者になればヘルパーさんを頼むという選択肢があるけど、40代、50代は家事は自分でするもの、と考えているのかもしれません」(同)

 J-Net21が2019年6月にインターネットで行ったアンケート調査(国内在住の20代~60代男女/有効回答数1000人)によると、家事代行の利用率は2%。利用者を年代別・男女別に見ると、20代男性が6%と最も高く、次いで60代男性が4%、30代男性が3%となっている。一方、50代、60代の女性の利用率は0%。Aさんが感じているように、世代や性別によって家事代行への意識は異なっているようだ。

片付けられない人の共通点とは?

 Aさんのもとに舞い込む依頼内容には、難しい案件も多い。特に掃除代行で訪れる家は、すさまじい状況になっているという。

「単発の依頼で掃除に入るお宅は、すさまじい状況になっていることが多いです。すべての部屋の床に子どものおもちゃが散在していたり、脱いだ服やトイレットペーパーがそこら中に落ちていたりしています。しかも、そういう人に限って部屋数が多い広い家に住んでいるので、掃除が大変なんです……」(同)

 そして、仕事を続けているうちに片付けられない人の共通点が見えてきた、とAさんは話す。まずひとつが“大量の掃除グッズ”だという。

「すごくたくさんの掃除グッズを持っているんです。使い方も熟知しているのですが、全部未開封のまま。うかがったお宅で新しい掃除グッズを知ることも多いです(笑)。また、整理整頓を思い立って収納ボックスをネットで購入しても使っていない、という人もよく見ますね。商品が届いた時点で満足して、古いボックスも捨てないから、モノであふれてしまうんです。掃除グッズはたくさんあるのに掃除機がない家に行ったときは、さすがに途方に暮れました」(同)

 片付けられない人はストック癖もあるため、ある家では切り干し大根の大きなパックが4袋も出てきたことがあるという。

「私が見ている世界とお客様の見ている世界がまったく違う、と感じた経験は何度もあります。たとえば、お客様の要望をヒアリングする際に、開口一番『テーブルクロスのシミを落としたい』と言うのです。でも、リビングを見ると、床には食べこぼしや髪の毛など、いろいろなものが落ちていて、全体的にえらいことになっているんですよね。それでもテーブルクロスのシミが最優先なのは、本当に不思議でしたね」(同)

 また、2020年は新型コロナの影響が意外な形で表れた、とAさんは振り返る。緊急事態宣言下の4月、5月はオファーが激減したものの、宣言が解除された6月には、それまでの自粛ムードが嘘のようにたくさんのオファーが来たという。

「解除後すぐに入った仕事は、なかなかインパクトがありましたね。それまで定期契約で週に1回掃除に入っていたお宅には、洗濯物が山のように積んでありました。洗ったものと洗っていないものが混在していて『これは洗ってあります』と言われましたが、グシャグシャでシワだらけだったので、結局全部洗濯。洗った服がなくなったら新しい服を買えばいいやと思うようで、服自体もかなり増えていましたね」(同)

「荒れた部屋ほど燃えるタイプ」と話すAさんは、ドアを開けた瞬間にやる気がみなぎったという。コロナ禍でも、家事代行業界は密かに活況を迎えていたようだ。

神経をすり減らす事前のヒアリング

 日々、さまざまなお客様の家で仕事に励むAさん。多岐にわたる業務の中で最も気を使うのは、事前に先方の希望を聞くヒアリングの作業だという。

「特にこだわりが強そうな人には、かなり細かくヒアリングをします。たとえば、前述のテーブルクロスのシミが気になるお客様の意向を無視して、クロスを後回しにすると『部屋はきれいになったけど、希望通りの掃除をしてくれなかった』というクレームが入るんです。なので、部屋全体がどんなに汚れていても、まずはお客様が気にしている部分の掃除から取りかかります」(同)

 とにかく依頼人の意向を優先しなければ、クレームにつながる。そのため、ヒアリングの段階で先方のこだわりを見抜かなければならないのだ。

「荒れた部屋の掃除は時間との戦いです。でも、一部分の汚れにこだわられると、お客様が納得するまできれいにしなければならず、時間が足りなくなってしまうんです。どんなに汚れていても、こちらに丸投げしてもらえる方が自己流で進められてやりやすいですね」(同)

 また、お客様への“余計なアドバイス”も禁物、とAさん。

「スタッフの中には、単発のお客様に『毎週、お掃除代行を入れた方がいいですよ』なんて営業をかける人もいます。でも、それは暗に『あなたのお宅は汚いですよ』という上から目線の発言になり、先方を怒らせる可能性があります。お客様の生活や人格の否定はご法度です。よけいなアドバイスをして担当を外されたという話は、よく耳にしますね」(同)

 仕事中はかなり気を使う。そのため、Aさんは「家事や整理整頓の能力は基礎スキルとして重要だが、プラスアルファとしてコミュニケーション力も必要」と話す。

「どの案件も自分の想像を超えてくるので、家事代行の仕事を始めてから、かなり価値観が広がりました。技術よりも相手の意向を汲む力の方が重要なので、コミュニケーションスキルが高い人の方が適していると思います。やりがいはありますが、家事に自信があるだけでは、なかなか続かない仕事ですね」(同)

 気力と体力、そしてコミュニケーション力が問われる“家事代行業”。適性さえあれば、刺激的な毎日が送れるかもしれない。

(文=谷口京子)

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