新型コロナ、ワクチン接種=感染リスクゼロではない…持続期間、感染予防効果等、不明点も
世界91の国と地域で、急ピッチで進められている新型コロナウイルスのワクチン接種(2月25日現在)。そのなかでも世界最速のペースで進むイスラエルでは、2月半ばの時点ですでに国民の40%以上が接種し、新規感染者はピーク時から29%も減少していると報告されている。集団免疫の取得を目指すイスラエルのネタニヤフ首相は、次なる政策「グリーンパスポート」を打ち出し、さらなる注目を浴びている。
イスラエルでは21日、ワクチンパスポートとなる「グリーンパスポート」の発行を開始した。グリーンパスポートは2回のワクチン接種を終えた人に発行され、スポーツジムや文化施設など複数の人が利用する感染リスクが高い場所に入る際、提示を義務付けるものだ。
これにより、ワクチン接種を促す狙いがある。ワクチンによって集団免疫が取得されれば感染が収束することは大いに期待できるが、新型コロナウイルスについてはいまだに不明なことも多く、変異株も出ており過大な期待は危険である。慶應義塾大学医療政策・管理学教室特任助教の坂元晴香氏は、ワクチン接種後も注意が必要だと話す。
ワクチン接種後も、感染リスクはゼロではない
日本でも医療従事者へのワクチン接種が始まったが、ワクチン後の感染リスクがゼロになるわけではない。坂元氏は特に次の3つの点をよく理解してほしいと話す。
(1)ワクチンを接種してから実際に抗体ができるまで数日かかる…ワクチンを打ったその足で遊びに行かないように
(2)ワクチンの効果の持続期間は不明である…少なくとも終生免疫ではなさそうなので、数カ月後には効果が切れている可能性あり
(3)発症予防効果は確かにあるが、感染予防についてはどの程度か、まだ不明である
「ワクチンによる発症予防は確かですが、感染予防についてはどの程度かまだ不明です。おそらく感染そのものを予防する効果もあるといわれていますが、まだ研究では明らかになっていません。さらに、ワクチンを接種した人が他人に感染させないかどうかも現時点ではわかっていません。
ある程度の国民にワクチンが行き渡り、かつワクチンの効果が一定程度持続することが明らかにならない限りは、当面、以前のような生活に戻るのは難しく、引き続き手洗い・マスク、3密回避等は必要になると思います」
ワクチン摂取による集団免疫の取得に成功するには、グリーンパスポートではなく、接種後もさらなる感染対策を推進することが重要である。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)