高額なAED、2万人以上の心肺停止者に使用されず…約50万台で使用は年0.2%のみ
今日はAEDのお話です。“非常識君”は「これ以上のAEDの普及は不要」という考えで、“極論君”は「もっとAEDの普及を」という立場での論戦です。まず“常識君”の解説です。
「AEDとは、自動体外式除細動器の略です。自動ではない除細動器は以前より医療現場にはありました。心室細動になった患者さんの心臓に電気刺激を与えて、心臓を規則正しい拍動に戻す道具です。心臓が止まるといいますが、多くは心臓が止まっているのではなくて、たくさんある心臓の細胞が勝手に興奮している状態で、ポンプ機能が止まっているのです。そんな時に一度心臓の細胞に電気刺激を与えると、全体としてのポンプ作用が回復するのです。
『自動』とあるのは、医師の判断なく器械が心電図所見を判断するからです。ところが全自動ではなく器械が音声でしゃべるので、それに従って誰かが電気ショックのスイッチを入れる必要があるのです。一部の国では全自動の器械も承認されているようですが、日本では承認されていません。医師だけが行える医療処置でしたが、2003年に医師の指示がなくても救命救急士がAEDを使用することが認められ、続いて04年には一般人の使用も認められました。そこで普及したのです」
非常識君が言います。
「累計50万台以上が出荷されました。廃棄されたAEDの数は不明ですので、実際に何台が使用できる状態で設置されているかは実は不明なのです。公共の場で心肺停止に陥った人は毎年2万5000人近くいますが、実際にAEDの処置を受けた人はたった1000人、全体の4%です。50万台で1000人に使用されたということは、500台に1台しか稼働していないことになります。そしてAEDは数十万円はする器械です。そんな稀にしか使用しない器械をこれ以上設置する必要はないと思ってます」
まずは啓蒙が必要
極論君が言います。
「AEDの治療を受けた人は、半数近くが社会復帰しているそうです。そうであれば、使用頻度が少ないといっても設置する必要性があるのではないでしょうか」
常識君のコメントです。
「心臓が停止すると、心臓マッサージを行わなければ1分間で10%の割合で死亡率が上昇していきます。救急車の到着時間はだいたい8分前後なので、それでは間に合わないのです。ですからAEDの設置が積極的に行われてきました。AEDは心肺停止で横たわっている人に、ボックスを開けると器械が指導してくれます。電極であるシールを貼って、そしてAEDが心電図を解析して心室細動であれば、『ボタンを押してください』というコールにつながるのです。極めて簡単で、最近は市民向けの講習会も行われています。