医療を取り巻く大きな問題のひとつに「医療費」がある。超高齢化社会で、医療保険が適用される件数は増大する一方だ。筆者が医療現場で感じるのは、医療を施す側の医師も、医療を受ける側の患者も、医療保険への認識が薄いということだ。
「保険料を支払っているのだから、医療保険を受けるのは当然の権利だ」という患者の主張も理解できるが、考えるべきは「10年後、20年後の医療費」だ。若い世代のなかにも、自分たちが老人となった時に十分な医療が受けられるのかと不安を抱く人も多いだろう。
若い世代にはピンとこないかもしれないが、高血圧や糖尿病などの慢性疾患や、男性であれば前立腺肥大に伴う諸症状の治療に必要な薬は安価ではない。現行の「3割負担」が破綻すれば、老後生活が危ぶまれる事態となりかねない。ミドル世代ができることは、医療費についての正しい理解と取り組みである。
崩れゆく国民皆保険
日本では、1958年に国民健康保険法が制定され、61年に全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、「誰でも」「どこでも」「いつでも」保険医療を受けられる体制が確立された。その国民健康保険法により国民は、医療機関を受診した際に窓口で自己負担3割を支払えば医療を受けることができる。残りの7割は国や保険機関が支払ってくれるわけだが、その財源確保が難しい現状であることは読者諸氏もご存じの通りだ。
現在の医療費がどのようにカバーされているかというと、患者負担が3割、国民や企業が支払う健康保険料から3割、残りの4割は税金などから補填されるという内訳である。厚生労働省の調査によると、2015年の国民医療費は42兆円にも上り、超高齢社会の25年には54兆円に達すると試算している。医療費を賄う財源がなくなれば、患者の自己負担が増えることは必須だろう。国は国民皆保険の崩壊を避けるため、個人ができる取り組みとしてジェネリック医薬品の普及に努めている。
先発医薬品を望む場合、ジェネリックとの差額が自己負担に
17年5月31日の中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、薬価制度改革と医療費削減の一策としてジェネリックの普及について論議された。その際、「先発医薬品の薬価を、後発医薬品と同額まで下げる」「先発医薬品と後発医薬品の差額を患者負担とする」の2点の案が出たが、反対多数で論議は終わった。
しかし、医療費が増大し続ければ、再度論議され、賛成が反対を上回る可能性もゼロではないだろう。特に、ジェネリックについては、国が普及推進をしているにもかかわらず、患者本人の意向で先発医薬品を選択する場合、ジェネリックとの差額を自己負担とする策は導入してもいいのではないだろうか。