あくまで筆者の見解であるが、日本の医療制度を当たり前と考えるところに無理があると考える。たとえば、ドイツでは「参照価格制度」というルールの下、ジェネリックの普及が進んでいる。ドイツは完全なる医薬分業が成立しており、患者は医療機関で医師の診察を受けて処方箋を発行してもらい、薬局で薬を受け取る。参照価格制度は、同種同効薬をグループ分けし、参照価格(保険償還上限価格)を設定する。そして、その参照価格までを保険給付とし、差額は自己負担となる。これは、ドイツが行うジェネリック普及のための取り組みのひとつにすぎないが、日本も見習うべきかもしれない。
ジェネリック普及には医師の力が不可欠
医師が処方箋を発行することは、いうまでもない。そのため、ジェネリックの普及には医師の力が不可欠である。患者のなかには、いまだジェネリックについて「安かろう悪かろう」といった固定観念を持っている人が多いことに驚く。また、残念なことだが、医師のなかにも同様の考えを持つ人がいるのも事実であり、医師が一言でも「ジェネリックは良くない」と言えば、患者は大きく影響され「ジェネリックは絶対に嫌だ」と主張する患者を生み出すことになる。
ジェネリックへの認識を改めるべき医師がいることも事実である。ジェネリックを好まない患者から、「あなたはジェネリックを勧めるけれど、自分では先発品を飲むでしょ」と詰問されることも少なくない。しかし、筆者はジェネリックを飲んでいる。なぜなら、ジェネリックは先発医薬品の特許期間10年の間に製剤として改良されているものが多く、優れた薬であるからだ。コンピューターを買うときに、わざわざバージョンが古い型を選んで高い値段で買う人はいないだろう。それと同じだ。
医療現場で患者と触れるなかで感じるのは、医薬品について理解が高いハイインテリジェンス層の患者は、概ねジェネリックを選択する傾向にあるということだ。ジェネリックに偏見がある人は、単に理解が十分ではないと思われる。
ジェネリックにすることは人権を害していない
ジェネリックを普及させるために、論じなければいけないことがある。それは生活保護患者への処方である。現状の生活保護法では、生活保護患者への処方は原則ジェネリックとしている。しかし、実際には生活保護患者のジェネリックの使用は、70%程度にとどまっている。「原則としてジェネリック」というと、「人権侵害だ」などとネガティブ意見が出るが、そうではないことを理解してもらわなければならない。
多くの医療機関では国の指導のもと、すべての患者にジェネリックを勧めている。ジェネリックは、特許を有しないという理由で安価が実現できるのであり、先発医薬品と同じ効果効能を持つことを理解してほしいと切に願う。ジェネリックを処方してもらうことで、各個人としても医療費削減に取り組むことができるのだ。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)