ヒカルの兄・まえっさんが手術した「骨性マレットフィンガー」とは?突き指とは何が違う?
トップYouTuber「ヒカル」の兄で“まえっさん”こと「まえす」が、緊急手術を受けたことを報告する動画を配信した。
小学生とドッヂボールをした際にボールが指に当たり、突き指だと思っていたが腫れが異常なため受診したところ「骨性マレットフィンガー」と診断され、治療には手術が不可欠と告げられたことを明かしている。さらに、手術をしても元に戻ることは難しく、「湾曲が残る」可能性があり、全治2~3カ月だという。
骨性マレットフィンガーとは、どのような症状なのだろうか。医療法人社団ONE TEAM 狛江はく整形外科院長、加藤基樹医師に聞いた。
「手指の先端からストレスがかかって突き指した際に末節骨に生じる骨折です。DIP関節(第1関節)伸展位で屈曲のストレスがかかることにより、末節骨背側に付着している伸筋腱の付着部で剥離骨折が起こった状態です。小児では骨端線の離開になることもあります。スポーツでは球技による受傷が多く、特に野球やバスケットボール、バレーボールなどで多く発生しています」
確かに、まえすもドッヂボール中に負傷している。皆さんも球技を行う際は十分に注意してほしい。動画でも、まえすの指がまっすぐにできない様子を報告しているが、その状態こそ骨性マレットフィンガーの特徴的症状である。
「受傷直後からDIP関節が曲がっており、腫脹、発赤、圧痛などを生じます。DIP関節での指伸展機構の損傷であり、DIP関節の自動伸展が不可能になります。放置するとPIP関節(第2関節)が曲がりにくくなったり、過伸展変形したりすることもありますので、早期の診断、治療が必要です。突き指と軽視されがちですので、受傷初期に単純X線で骨折の有無を確認することが必要です」
まえすは負傷した当初、単なる突き指と考え、しばらく放置していたが一向に治らず、病院へ行ったところ、手術が必要なほどの状態とわかったという。突き指と軽んじず、速やかに受診することが大切だ。
治療しても元には戻らない?
骨性マレットフィンガーの治療法には、「保存治療」と「手術治療」がある。まえすは手術をしたことも動画にしており、かなり重症であったことが想像できる。
「骨片の大きい際や骨折部のずれの大きい時は手術が必要となります。手術法にはさまざまありますが、多くは皮膚の上から鋼線を2~3本刺して固定する方法が行われます」
一方、手術をしない場合でも、治療は簡単ではないようだ。
「剥離した骨片が関節面の3分の1以下と小さい時や、骨折部のずれが非常に小さい場合、骨折部より末梢の骨片に脱臼がない時は保存加療の適応となります。保存治療では、シーネや装具を用いて、DIP関節を伸展位で固定することが基本となります。固定期間は、定期的な単純X線での評価を行いながらですが、6~8週間の終日固定を行います。その後は、リハビリテーションを行いながら、4週程度は夜間のみの固定は継続します。リハビリテーションでは、(1)自力でDIP関節を動かす(ただしPIP関節が動かないように健側の指を用いてPIP関節を固定すること)。(2)DIP関節を他動的に動かすことを行います」
動画でも「完全に元に戻ることはない」と言っているが、わずかに指の湾曲が残る場合が多い。
「多くの場合、DIP関節の伸展障害が残りますが、角度は6~10度とわずかであり、日常生活に支障を来すような障害が残ることはほとんどありません。また、伸展位での2~3カ月程度の固定期間を要し、固定が外れた後しばらくはDIP関節の屈曲の固さは残りますので、積極的にリハビリテーションを行うように心がけてください」
動画では負傷から手術までの経過を報告しているが、ヒカルは手術に付き添い、一方の手術をしたまえすは「怪我をしたのがヒカルじゃなくてよかった」と語り、深い兄弟愛が垣間見えた。多くのファンからも励ましのコメントが寄せられている。まえすの1日も早い回復を祈る。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)