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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

「天然物は安全」は本当?危険な食中毒が絶えず…毒魚で死亡例、ジャガイモで健康障害

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授

 市販されている栽培キノコは安全ですが、採取したものは食べられるかの判断が必要となります。たとえば市販されているヒラタケはキノコを好きな人であればすぐにわかります。しかし、天然のヒラタケは日当たりやその年の天候だけでなく、驚くほど大きくなることもあり、大きさや色や形も変わります。図鑑を多く揃えて比べてみても判断が困難なものもあります。キノコの種類はとても多く、キノコ図鑑等で食と書いてあれば食べられる。毒と書いてあれば毒キノコであることは誰でもわかりますが、食も毒も書いてないものが驚くほど多く、これは食用となるのか毒キノコなのか不明のものです。

「天然物は安全」は本当?危険な食中毒が絶えず…毒魚で死亡例、ジャガイモで健康障害の画像4
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 食中毒を起こしやすいキノコはツキヨタケ(表3)が最も多く、次いでクサウラベニタケ(表4)、カキシメジなどで、これら3種類でキノコ中毒の約60%を占めるといわれています。食用となるかの判定方法は、縦に裂けるなどさまざまな方法がいわれていますが、どれも例外が多く、信用しないほうが良さそうです。キノコの中毒は東日本に多いという特徴があります。

 そのほかに、植物性の食中毒としてはチョウセンアサガオやスイセンなどによる被害が報道されることがありますが、似ている植物と間違えて食べてしまったことや、水仙のようにニラに混じって生育しているものを一緒に収穫して食べてしまうためによるものが大半です。

 また、天然にはシアン化合物を含むものが非常に多く存在します。食品衛生法では10ppmを超えてシアン化合物を検出した場合は、食品衛生法(6条)違反として適用されます。主な食品としては 亜麻の実、杏子の種子、梅の種子、ビターアーモンド、 キャッサバの葉、びわの種子などです。ただし、調理・加工によって、最終商品での含有量が低減される事例については違反に該当しないとしています。

 毎年繰り返される天然物による食中毒の大半は、捕獲あるいは採取する人の注意によりなくすことができます。市場を経由した天然物による食中毒はほとんどありませんが、フグの肝を販売したり、有毒キノコが混ざっていたりすることも皆無ではありません。

 テレビで紹介された方法で処理した白インゲンを食べて健康障害を起こした例もありますが、昔から伝えられている食べ方は安全性の点からも理にかなったものが多々あります。特に自然のものを取り扱う場合は、流通や販売をする人も商品知識を高め、責任をもって消費者に渡す必要があるのではないでしょうか。
(文=西島基弘/実践女子大学名誉教授)

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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