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空間除菌製品、消費者庁が2社に措置命令、広告で優良誤認…コロナの不安に付け入る

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト
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「Getty Images」より

「新型コロナウイルスが怖い」「感染したくない」という人は非常に多いでしょう。そんな人々の心理につけ込むように、空間除菌をうたった製品が次々に売り出されていますが、そのほとんどは効果がないものです。

 そのため、消費者庁はこうした製品について取り締まりを強化しており、販売会社に対して、表示や宣伝の内容を改善するように命令を出しています。しかし、消費者庁が命令を出した製品以外でも、効果が期待できそうもない製品が数々売られているのです。

 消費者庁は4月9日、空間除菌をうたった除菌スプレーを販売する2社に対して、ウイルスを除去するような誤解を招く広告(景品表示法の優良誤認)を行なったとして、同法に基づいて、再発防止などを求める措置命令を出しました。

 その2社とは、「ノロウィルバルサン」という除菌スプレーを販売していた家庭用品メーカーのレック(東京都・中央区)、および「ケア・フォー ノロバリアプラススプレー」を販売していた原材料メーカーの三慶(大阪市)です。

「ノロウィルバルサン」は、亜塩素酸を成分とした製品ですが、レックでは、それを販売する際に一昨年11月から昨年10月にかけて、動画広告や同社ウェブサイトで「空間除菌、目に見えないウイルス・菌を99.9%除去」などと表示していました。また、「ケア・フォー ノロバリアプラススプレー」も成分は同じですが、三慶では、昨年8~10月にウェブ広告で「浮遊菌をカット!!」などと宣伝していました。

 消費者庁は2社に対して、それらの広告内容の根拠を示す資料の提出を求め、提出された資料を検討しました。しかし、いずれも合理的な根拠はないと判断し、今回の措置命令を出したのです。

効果に疑問の商品も

 ところで、これら以外でも効果が不確かであるにもかかわらず、空間除菌をうたって消費者に誤解をあたえているような製品がほかにもあるのです。その一つは、製薬企業のA社(社名のイニシャルではない/以下同)が販売している空間除菌製品で、IDカードのように首から下げるタイプのものです。成分から二酸化塩素が発生し、その作用によって周辺のウイルスや細菌を除去するというものです。

 新型コロナウイルスの感染が広まっている現在、「感染したくない」という人の中には、これを首から下げて、「周辺のウイルスを除去しよう」と考える人もいるでしょう。しかし、そんなことが実際に可能なのでしょうか。

 A社では、ある大学の研究グループとの共同研究成果として、二酸化塩素が新型コロナウイルスを不活化するという実験結果を、同社のサイトで公開しています。それによると、二酸化塩素標準水溶液(50ppm、100ppm、200ppm)について、新型コロナウイルスに対する不活化作用を評価した実験で、いずれも30秒、および3分間の作用で、99.99%以上の不活化作用を有することが明らかになったということです。

 この実験結果から、二酸化塩素の水溶液が新型コロナウイルスを不活化する作用があるということはわかります。しかし、この実験で明らかになったのは、二酸化塩素が一定程度溶けた水溶液が有する効果であって、A社の前の製品から発生した二酸化塩素が、この実験と同じ効果を有するかどうかは、わかりません。なぜなら、二酸化塩素は空気中に拡散してしまうからです。

 とくに建物の外に出たり、道路を歩いたりする場合、空気の流れが激しくなるので、拡散はいっそう激しくなり、さらに効果は薄れてしまいます。また屋内でも、二酸化塩素は三次元空間に急速に拡散していきます。しかも、オフィスビルでは通常空調が働いているので、空気の流れが激しく、そんな環境ではおそらく効果は期待できないでしょう。

 このほかも、似たような空間除菌製品がドラッグストアなどで売られています。その一つは、製薬企業のB社が販売するペンタイプの製品で、成分の亜塩素酸ナトリウム液から二酸化塩素が発生するというものです。

 実は消費者庁では、3月18日、別の会社の同様な空間除菌製品について、措置命令を出しているのです。それは、レッドスパイス(横浜市)という会社の「SARARITO(サラリト)ウイルスブロッカー」です。どうやら「SARARITO」から「SARS」を連想させようとしているようです。

 この製品は、首にかけるタイプのもので、同様に成分の亜塩素酸ナトリウムによってウイルスや細菌を除去するというもので、「塩素成分で空間のウイルスから除菌・除去」などと表示していました。

 そこで、消費者庁はこの根拠となる資料の提出を同社に求めましたが、提出された資料からは合理的な根拠が認められなかったため、こうした表示の再発防止などを求める措置命令を出したのです。

 A社やB社の製品も、同様に効果の根拠があいまいといえます。なお、二酸化塩素は非常に毒性の強い化学物質なので、その点でも問題です。二酸化塩素をラットに吸入させた実験では、第一次世界大戦に毒ガス兵器として使われた塩素ガスの4倍以上も毒性が強いことがわかっています。ですから、微量とはいえ、人間がそれを吸い込み続けた場合、害は出ないのか懸念されるのです。

(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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