若者を中心に人気が高まっているエナジードリンク。最近では、各メーカーからさまざまな種類が売り出されていますが、実はそのひとつに、食品衛生法に違反する疑いのある原材料が使われているのです。
その原材料とは、「L-カルニチンL-酒石酸塩」です。これは、L-カルニチンという物質と、指定添加物のひとつであるL-酒石酸を化学的に合成したものです。L-カルニチンL酒石酸塩は、エンジドードリンクのほかにサプリメントの原材料としても使われています。
L-カルニチンは、生体内に存在する遊離アミノ酸の一種であり、脂質代謝に必須であることから、俗に「脂肪を燃やす」「ダイエットに効果がある」ともいわれています。しかし、国立研究開発法人である医薬基礎・健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」によると、「ヒトでの有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない」とのことです。
一方で、L-カルニチンは循環器への効果が期待されており、うっ血性心不全患者の症状改善などの医薬品的な効果があることがわかっています。そのため、食品の原材料として使うことが難しかったのですが、2002年に「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」(厚生労働省医薬局長通知)のリストに加えられました。
このリストに載っているものは、医薬品的な効能効果がある可能性のあるものでも、その効能効果をうたわなければ、食品として使用してもよいということです。そのため、L-
カルニチンは、食品の原材料として使えるようになりました。
ただし、L-カルニチンは、吸湿性が高いため、貯蔵や取り扱いに困難な面があります。そこで開発されたのが、L-カルニチンL-酒石酸塩です。これは、L-カルニチンとL-酒石酸を化学的に合成したもので、空気中の水分に安定的で取り扱いが容易という利点があります。そのため、エナジードリンクやサプリメントの原材料として広く使われるようになったのです。
しかし、L-カルニチンL-酒石酸塩は、新たにつくり出された化学合成物質であり、それだけ未知の要素を含んでいます。そのため、添加物であるL-酒石酸よりも危険性は当然ながら高いことになります。したがって、L-カルニチンL-酒石酸塩については、少なくともL-酒石酸と同様に添加物として扱うべきです。
ところが、L-カルニチンL-酒石酸塩は、指定添加物として認可されていません。認可されていないものを添加物として使用していた場合、食品衛生法違反となります。ですから、L-カルニチンL-酒石酸塩を食品に使うことは、同法に違反していると考えられるのです。