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渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」

一部のエナジードリンク、食品衛生法違反ではないか?未知の要素含む化学物質使用

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト

厚労省の見解

 なぜ厚生労働省は、この状態を放置しているのでしょうか。厚労省にその点を問い合わせてみると、同省医薬・生活衛生局食品基準審査課の担当官は、次のように答えました。

「L-カルニチンそのものは食品として使われているものであり、L-カルニチンL-酒石酸塩は、L-カルニチンそのものを食品として摂取する目的で使用されていることと、米国やEUにおいても、L-カルニチンL-酒石酸塩は添加物として扱われていないことから、食品として扱うこととしています」

 つまり、L-カルニチンL-酒石酸塩は添加物ではなく食品と判断しているため、指定添加物に認可されていなくても使えるという意味です。

 しかし、この解釈には疑問を感じます。そもそもL-酒石酸を添加物として扱っているのに、それにL-カルニチンを結合させたL-カルニチンL-酒石酸塩を食品として扱うというのは矛盾しています。さらに次のような矛盾点もあります。

 L-酒石酸は指定添加物のひとつですが、俗に「疲労を回復する」「整腸作用がある」ともいわれており、医薬品的な効能効果の可能性があるため、前出の「成分本質」のリストにも載っているのです。このように指定添加物でありながら、「成分本質」のリストに載っているものは、ほかにもアスパラギン酸、クエン酸、グルタミン酸など数多くあります。

 厚労省からは、「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)の食品衛生法上の取扱い」という通知が出ていて、そのなかで、「成分本質」のリストに載っている指定添加物については、指定添加物として使用が認可されている品目以外のものを使うことは食品衛生法に違反するとあります。

 これは当たり前のことですが、わざわざこのように念を押しているのは、L-酒石酸の類似物質であるL-酒石酸カリウムやL-酒石酸カルシウムなどが、L-酒石酸の代わりに使われる可能性があるからです。しかし、L-酒石酸カリウムもL-酒石酸カルシウムも指定添加物として認可されていないので、それらを使った場合は食品衛生法に違反することになると注意を喚起しているのです。

 L-カルニチンL-酒石酸塩も、L-酒石酸に類似した物質です。そして、L-酒石酸カリウムやL-酒石酸カルシウムと同様に指定添加物として認可されていません。この点からも、L-カルニチンL-酒石酸塩を食品に使うことは、食品衛生法に違反すると考えられるのです。

 厚労省は、速やかになんらかの対応を取るべきです。少なくともL-カルチンL-酒石酸塩についてすぐに安全性を検討し、安全性が高いということであれば指定添加物として使用を認可し、安全性が保証されない場合は使用を禁止すべきです。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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