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「雑草系臨床心理士・杉山崇はこう考えます」

上司の考えがわからず怖いあなたへ、極めてシンプルな答え

文=杉山崇/神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授、臨床心理士
上司の考えがわからず怖いあなたへ、極めてシンプルな答えの画像1「Gettyimages」より

お互いに「本音」がわからない上司と部下

 働く人の相談業務をしていると「上司の本音がわからなくて怖い」というお気持ちが寄せられることがあります。もちろん「部下の本音がわからない」とお困りの上司もいます。人は本音と建前を使い分ける生き物なので、「本音がわからない」はどの人間関係にもあり得ることです。

 ですが、近年では上司と部下がお互いの本音がわからなくなったという悩みが増えているような印象があります。人は人のなかで癒され、ときに傷つく生き物です。お互いの本音が見えないのは怖いもので、ストレスです。なぜこのようになったのでしょうか。これは近年の職場環境の変化と無関係ではないように思えます。
 

ダイバーシティ(多様性)の功罪-活性化と一体感のトレードオフ

 
 近年、日本の企業改革のキーワードのひとつとして「ダイバーシティ(多様性)」という言葉が取り上げられています。スキルや働き方が画一化された従業員を多く集めるのではなく、得意もあれば不得意もある多様な社員を採ることで組織内に新しいイノベーションを生み出し組織を活性化させる取り組みです。多様な社員を採れば、社員のワークライフバランスに対する考え方もさまざまです。

 高度成長期の日本では企業はムラ社会に代わる生活保障の中枢を担っていました。生活基盤である「“カイシャ”に世話になっている」「一緒に盛り立てよう」という雰囲気が共有され、平社員から順当に主任、係長、課長……と“偉く”なっていくというモデルが共有されていました。上司は一種のロールモデルでもあり、今で言うメンター(心構えも含めた働き方の指導者)のような存在でもありました。

 しかし、ダイバーシティが進むなかで組織内でのステップアップを目指す人ばかりではなくなりました。自分の専門性が生きる仕事に集中したい人、経験値とスキルを身につけたら転職を考えている人、同じく独立を考えている人、仕事より自分らしい生活を大切にする人など、一人ひとりがまとっている“風”もさまざまになってきました。会社での身分も契約社員、有期雇用、業務委託、時間給勤務、など多彩になっています。ダイバーシティが進み従業員の価値観や働き方が多様化するなかで、一体感が失われつつある企業も多いようです。

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