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森由香子「間違いだらけの食」

認知症を予防する意外な「日常の習慣」…●●の数と関連?

文=森由香子/管理栄養士
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認知症を予防する意外な「日常の習慣」…●●の数と関連?の画像1「Gettyimages」より

「よく噛んで食べる」ことのメリットは、ご存じのように胃腸の働きを助け、消化吸収を高めることです。健康な食生活を送るうえで基本的な行為といえます。みなさんのなかには、頭でわかっていても、また意識はしていても、気が付くとついつい早食いになってしまう方もいらっしゃるでしょう。

 最近の研究で、「よく噛んで食べる」は、認知症予防にも効果があることがわかってきました。「噛む」という行為は、脳の中でも感覚、運動、記憶、思考、意欲をつかさどっている部位が刺激されるため、認知症予防にも効果があるというのです。「噛む」だけで脳が活性化し認知症予防効果が期待できるのですから、早食いの人は今日からでも噛む回数を増やしてみてはいかがでしょうか。

 では、なぜ「噛む」という行為が、脳を活性化させるのでしょうか。そのメカニズムを簡単に説明したいと思います。

 食事が始まると、まず、知覚神経を通じて脳に「食事をしている」という情報が伝えられます。ここでも脳が活性化します。そして、食事をするときに行う噛む行為が、脳の活性化をますます盛んにします。

 口のなかで食材を歯と歯を噛み合わせて噛むといった行為は、歯根にある歯根膜から知覚神経を通じて脳へ伝わりその刺激は、さらに脳から運動神経を通じて各々の部位にある筋肉に伝わっていきます。このように四方八方に刺激が伝達していくことで脳がますます活性化するのです。

 東北大学の研究で、高齢者の歯の残存数と認知症の関連性をみたものがあります。それによると、残っている歯が少ないほど、記憶、学習能力をつかさどる海馬や、意思や思考の機能に関与する前頭葉の容積が少なくなっていることがわかりました。このことからも、歯がなくなり噛めなくなると、脳の働きに影響を及ぼすことが理解できるのではないでしょうか。

 では「よく噛んで食べる」は、どれぐらいの回数を噛めば適切といえるのでしょうか。日本咀嚼学会では、健康な人がある食品を食べる場合の目安として30回としています。日本人の1回の食事での咀嚼回数は、食の欧米化、調理器具の発達などから、歯ごたえのある食材を使った料理を食べる機会が少なくなり、昔にくらべてだいぶ減ってきています。

 よく噛んで食べるには、歯の健康にも気を付ける必要があります。自分の歯で食べられるために必要な歯の本数は、20本。20本以上の歯があれば、硬い食材でもほぼ満足に噛めるとされています。

 早食いだと感じている方は、今日から一口30回を目安によく噛んでください。食事のときに、水、お茶、お酒で、食材を流し込んでいる方も、水分量を調整して噛むことを意識してみましょう。

 硬い食材をあまり食べていない方は、食生活に噛みごたえのある食材を積極的にとりいれてくだい。たとえば、こんにゃく、いか、たこ、ごぼう、れんこん、タケノコ、生のセロリ、キュウリ、大根、人参、エリンギ、柿、アタリメ、かたまり肉、フランスパン、煮干し、玄米、押し麦、ナッツ類などがおすすめです。何度も噛みつつ、顔、首、舌などの筋肉の動きを意識しながら食材を味わってみてください。

 日ごろより歯を大事にし、噛むことを意識して脳の活性化につとめ、認知症予防をしましょう。
(文=森由香子/管理栄養士)

森由香子/管理栄養士

森由香子/管理栄養士

東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科 人間生活科学専攻)修士課程修了。 クリニックにて栄養指導、食事記録の栄養分析、食事管理業務に従事。フランス料理の三國清三シェフととともに病院食や院内レストランのメニュー開発、料理本制作の経験をもつ。管理栄養士・日本抗加齢医学会指導士の立場から食事からのアンチエイジングを提唱している。「老けない人は何を食べているのか」「病気にならない人は何を食べているのか」「体にいい『食べ合わせ』」「太らない人の賢い食べ方」「老けない人の献立レシピ」など著書多数

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