2018年7月31日、2年2カ月ぶりに火星と地球が大接近します。火星は約2年(687日)かけて太陽のまわりを一周し、地球は火星の内側を1年で一周するので、およそ2年に一度、地球が火星を内側から追い抜くことになり、このときに火星と地球が大接近します。
すでに6月頃から火星は明るく輝いていて、東京都心のような夜空の明るい場所でも、少し赤く輝く火星を簡単に見つけることができます。21時から深夜にかけて、南東から南の方角の正面を見るくらいの目線で視野に入る、明るく大きな星は間違いなく火星です。8月にかけて、とても見やすい位置に毎晩現れるので、ぜひみなさんも南から東にかけての空を観察してみてください。彗星のように真上を見上げる必要がないので、とても楽に会社帰りの天体観測を楽しめると思います。
ちなみに、火星と地球が約5759万キロメートルの距離まで最接近するのは7月31日の16時50分頃なので、日本ではまだ太陽が明るく輝いていて、その瞬間を観察することはできないのが残念です。
火星の地下に水や原始的生物も?
火星については、最近「生命の材料と共通の複雑な化学物質が見つかった」というニュースが話題になりました。発見したのは、2012年に火星に着陸後、地上を走り回りながら探査を続けている、軽自動車ほどの大きさの火星探査車「キュリオシティ」です。このキュリオシティが火星の岩にドリルで穴を開け、風化や汚染がされていない内部の組成を調べたところ、大昔の火星には地球と同じ、炭素を含む複雑な化学物質(有機化学物質)があったことを突き止め、6月にアメリカの有名な科学雑誌に論文が発表されました。
火星で複雑な化学物質が発見されたことは、「過去の火星に生命が存在したか」あるいは「生命が誕生するきっかけとなる環境が用意されていたか」の証拠となり得ます。そのような化学物質があることは1970年代の探査から報告されていましたが、それらはとても簡単な構造の物質だったため、データの誤認や探査機に付着した有機化学物質を火星に持ち込んだ可能性も否定できませんでした。
今回の調査は、火星の「ゲール・クレーター」と呼ばれるくぼ地で行われました。現在の火星は全体が乾ききった砂漠と岩山ですが、約35億年前、このクレーターは豊かな水をたたえた湖だったことが、地形から明らかになっています。
分析された岩石は、約30億年前に湖に流れ込んで堆積した土砂が固まってできた岩だと推定されています。湖の中に原始的な生物でも存在していれば、地球のバクテリアのように細胞は有機化学物質で満たされていたはずで、それが土砂とともに固められて、現在キュリオシティが調べているような岩石になったと推定されます。
ただし、有機化学物質は生命の関与しない化学反応によってもつくり出されるため、今回の発見が「太古の火星に生物がいた」という決定的な証拠にはなりません。しかし、少なくとも火星には過去に湖があり、そこでは生命と共通する複雑な化学物質が形成されていたことは確実になりました。火星には今も地下に氷あるいは水があり、そこには原始的な生物がいる可能性も示唆されており、人類初の地球外生命との遭遇の日を夢見た探査が加速しそうです。
『宇宙と地球を視る人工衛星100 スプートニク1号からひまわり、ハッブル、WMAP、スターダスト、はやぶさ、みちびきまで』 地球の軌道上には、世界各国から打ち上げられた人工衛星が周回し、私たちの生活に必要なデータや、宇宙の謎の解明に務めています。本書は、いまや人類の未来に欠かせない存在となったこれら人工衛星について、歴史から各機種の役割、ミッション状況などを解説したものです。