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ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~一極集中を裏で支える東京の本当の実力

「東京一極集中」のまやかし…外国人の増加が際立つ5区

文=池田利道/東京23区研究所所長

「国勢調査」万能の時代は終わり

 図表1によると、多摩地域の日本人人口は過去5年間で0.2%減っている。ところが、このデータが正確に実態を表しているかとなると疑問符がつく。15年の「国勢調査」による東京都の人口は1352万人。うち日本人が1295万人。両者の差の57万人が外国人かというとそうではなく、外国人は38万人で、残る19万人は日本人だか外国人だかわからないという。住民基本台帳による同じ時点での東京都に住む外国人の数は44万人なので、国籍不明の19万人の大半は日本人だとも考えられる。

 多摩地域はこの傾向がもっと強い。「国勢調査」による日本人以外の人12.9万人のうち、外国人は5.9万人、国籍不明7.0万人。一方、住民基本台帳による外国人数は6.8万人。国籍不明の大部分が日本人ではないかと疑われる。

 筆者が学生だった頃、「正確なセンサス(統計データ)を有しているのが先進国の証拠であり、『国勢調査』というデータを持つ我が国こそ、先進国の雄たる資格がある」と教わった。しかし、時代が進むにつれ、プライバシーという視点からセンサスに意識的に答えない人が増えてきた。

 たとえば、15年の「国勢調査」で年齢を答えなかった人は23区全体で2.0%、世田谷区では5.4%。さらに、10年の「国勢調査」では、杉並区のおよそ7人に1人(13.8%)が年齢を答えなかった。「国勢調査」万能の時代は、もはや過去のものと化している。

 先日、最高裁判所は17年の衆議院議員選挙における「一票の格差」訴訟に対し、「2020年の『国勢調査大調査』の結果に基づきアダムズ方式による抜本的な見直しを図る」という政権与党の姿勢を評価して「合憲」の判断を下した。しかし、「国勢調査」には前述したように少なからぬ誤差がついて回る。日本人だか外国人だかわからない人や、選挙権があるのかないのかわからない人の存在を、どう捉えればいいのだろうか。

 さらにいえば、「2020年の大調査」という点にも問題がある。「国勢調査」は西暦末尾「0年」と「5年」の年に行われ、「0年」に実施する調査を「大調査」と呼ぶが、両者の違いは学歴など調査項目が少し多くなるだけ。衆議院議員の定数是正とはまったく関係がない。

 なるほど住民基本台帳には、転居しても住民票を移していない人がいるという誤差がある。しかし、誤差は「国勢調査」にも存在する。にもかかわらず、すぐに実態が把握できる住民基本台帳ではなく、「国勢調査」のしかも「2020年の大調査」の結果を待たねばならないという説は、筆者には夏休みの宿題をさぼった言い訳に等しい理屈に聞こえてしまう。

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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