「東京一極集中」のまやかし…外国人の増加が際立つ5区
外国人は「首都圏一極集中」状態
東京一極集中に話を戻そう。前述したように「国勢調査」の外国人データはあまり当てにならないので、住民基本台帳のデータを見ることにする。
図表2に示した通り、18年1月1日時点で日本人の首都圏への集中率は28.3%。東京23区への集中率は7.2%。これに対して、外国人の集中率はそれぞれ41.1%、17.6%。外国人に限っていえば、間違いなく首都圏一極集中の状態にある。
外国の人が我が国で暮らしていくためには、住む場所の確保や自治体の受け入れ態勢が大きな壁となる。それは首都圏でも変わりないのかもしれないが、地方と比べれば、環境整備がずっと進んでいる。それ以上に、外国人が祖国を離れて日本で暮らしていくとき、一番頼りになるのは同胞の存在だ。そのため、同胞が多く住む首都圏に外国人が集まってくるのは、ごく自然な結果にほかならない。
出入国管理法が改正され、19年度から外国人労働者の受け入れ枠が拡大されることになった。その是非をここで問うつもりはない。しかし、現状において外国人労働者が増えれば、その当然の帰結として首都圏への一極集中は進む。右手で首都圏一極集中の是正を唱え、左手で現状のままでの入管法改正を進めようとするのは、どう考えても理にかなわない。
外国人はレアケースと考えるのは決定的に間違っている。15年10月~18年10月の3年間の23区の人口(住民基本台帳ベース)は各区とも増加しているが、外国人の増加数が日本人の増加数を上回っている区が、豊島を筆頭に江戸川、足立、中野、葛飾の5区に及ぶ。23区の平均で見ても、人口増加数の3割以上(31.2%)を外国人が占めている。
外国人の集中は、東京一極集中を語る上でもはや無視できない存在となった。この現実を見ないことにして東京一極集中を語ることは、無責任のそしりを免れることができない。
少なくとも、多くの人たちが疑いもしない東京の「常識」がデータに照らせば「非常識」だったという実態は、あらためて問い直してみる必要がありそうだ。
(文=池田利道/東京23区研究所所長)
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