コロナ禍の中で迎えた2回目の冬、インフルエンザとのダブル感染も危惧され、誰もが感染対策に余念がない。インフルエンザの感染予防には「湿度50~60%が良い」といわれることもあり、近年、加湿器を使用する人が増えている。しかし、加湿器の使用法を誤ると「加湿器肺炎」を招き、健康を害する恐れがある。
加湿器肺炎とは、加湿器に発生したカビが原因で起きる肺炎をいう。本来は、定期的に掃除をして使用すべき加湿器だが、手入れをせずに水を足して使用を続けると、雑菌やカビが繁殖する。そして、繁殖したカビを含んだ水分が部屋中に拡散されてしまい、呼吸によって肺にカビが到達すると肺は過敏性の炎症を起こし、さらに悪化すると肺炎を引き起こす。発熱や咳、息苦しさ、倦怠感などの症状が現れるが、すぐに肺炎と気づかないケースも少なくない。
一般的な細菌性の肺炎では、抗生物質での治療が効果を示すが、加湿器肺炎には抗生物質の効果は薄い。加湿器肺炎であることに気づかず治療が遅れてしまうと、肺が繊維化し元に戻らない不可逆的な変化が起き、日常的に咳や息苦しさなどが続くこともある。
加湿器肺炎に罹患して肺の炎症が進み、酸素飽和度(血液中の酸素量の指標となる値)が低い場合には入院治療を行い、重症になると酸素吸入や人工呼吸器による治療が必要となる。薬物治療では、症状に応じてステロイドを使用することもある。
近年、我々の生活に加湿器は必需品であり、デザインや機能もさまざまだが、大きく以下のタイプに分けることができる。
•スチーム式:加熱により蒸気を起こす
•気化式:水を浸透させたフィルターにファンで風を送り気化させる
•超音波式:超音波の振動によって水をミスト状に放出する
•ハイブリッド式:気化式とスチーム式を組み合わせ、熱を利用し加湿する
スチーム式とハイブリット式は加熱するため比較的、カビや雑菌が繁殖しにくい傾向にある。一方、気化式と超音波式は雑菌が繁殖しやすく、手入れを怠ると加湿器肺炎の原因となりやすい。
加湿器を使用する際は、取扱説明書にある手入れの方法に従い、定期的な掃除を行ってほしい。また、加湿器のタンクに入れる水は水道水を使用し、毎日入れ替えることも重要である。その際には、タンク内に残った水は捨て、新たに水道水を入れて振り洗いすると汚れの防止となる。
ウイルス感染を予防し、喉や肌の潤いを守るための加湿器で健康を害することがないように加湿器は正しく使用してほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)