身だしなみに常に気を遣わなければならない社会人。特に男性は、無精髭などが生えていると不衛生に見られてしまうこともあるため、個人差こそあるものの、ほぼ毎日、綺麗に剃って整えている方も多いだろう。
しかし、肌が弱い方や髭が濃い方などは、この毎日の作業が億劫だったり苦手だったりすることもあるだろう。カミソリ負けして肌がヒリヒリしたり、そこから吹き出物ができてしまったりと、悩みの種になることも少なくないはずだ。
また、T字カミソリと電動シェーバーでは、どのような差があるのかや、それぞれどのようなメリットがあるのかなど、意外と知られてないことも多いのではないだろうか。
そこで今回は、正しい髭の剃り方などを、カミソリメーカー担当者や皮膚科医に聞いてみた。
T字カミソリと電動シェーバーのメリットや使い分け方
最初に押さえておきたいのは、T字カミソリと電動シェーバーでは、それぞれどのようなメリットがあるのかということだ。そこで、男性用カミソリ・髭剃りの人気シリーズ「Gillette(ジレット)」を展開するプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)に話を聞いた。
「一般的には、T字カミソリは深剃りしやすく、コンビニエンスストアやドラッグストアなど幅広い店舗で買えることや、初期コストが安いことがメリットです。一方の電動シェーバーは、肌への負担が少なく、手間や時間がかからないことがメリットでしょう」(P&G広報担当者)
続いて、カミソリ負けや吹き出物の対処法などについて、全国各地で肌についての講演を行っている、もりはら皮ふ科クリニック院長・森原潔氏に話を聞いた。まず、髭剃りに関して耳にする「順剃り・逆剃り」は、どちらがおすすめなのだろうか。
「逆剃りというのは、毛の生えている流れに対して逆から剃ること。T字カミソリで逆剃りをすると、毛に引っ張られて皮膚が持ち上がってしまいます。そして、その盛り上がった皮膚にカミソリの刃が直接当たることで、カミソリ負けなどの症状が出てしまうのです。ですからT字カミソリの場合、基本的には順剃りで行ってください。ただし、顎や唇の下など剃り残しが出てしまうところは、限定的に逆剃りをするのは問題ありません。
一方の電動シェーバーは、T字カミソリとは違い、外刃と呼ばれる無数の穴で毛をキャッチし、内刃でハサミのように切る構造であるため、逆剃りでなければ毛をキャッチできず剃ることができません。ですから電動シェーバーの場合は逆剃りで使ってください」(森原氏)
髭を剃る一番良いタイミングは?
森原氏によると、髭剃りから肌を守るために、注意すべき点がいくつかあるという。
「基本的に髭剃りは、時間があるときにゆっくり鏡を見ながら行っていただくのがベストです。特に肌荒れに悩んでいる方は、お風呂に入っているときやお風呂上がりに剃るのがいいでしょう。そもそも髭はかなり硬い毛なので、柔らかい皮膚を傷つけず髭だけ剃るのは困難です。お風呂で髭を十分に湿らせ、ふやかした状態で剃ったほうが皮膚へのダメージを少なくできます。さらに、お風呂上がりの清潔な状態であれば、もしカミソリで肌を傷つけてしまった場合でも細菌が傷から入りにくいため、ニキビなどの吹き出物などが出来にくくなるメリットもあります。
朝に髭を剃らないと、夕方には無精髭になってしまうのではないかと思われる方が多いかもしれませんが、夜の風呂上がりに剃る人と朝に剃る人とでは、見た目にさほど差は出ないと考えます。髭は伸びても1日に0.4mm程度で、しかも深夜にはあまり伸びないことがわかっています。顔を触ると髭のざらつきにはそれなりの差が出るので、朝に剃りたい人が多いのかもしれませんが、朝は慌ただしく髭剃りが荒くなり、どうしても肌荒れのリスクが高まります。
ちなみに、一般的にT字カミソリより電動シェーバーのほうが肌荒れを起こしにくいと考えられています。しかし、T字カミソリには深剃りがしやすい、ヘッドが小さいため細かく髭を調えやすいなどのメリットも多いのが事実です」(同)
では、肌をケアするには、どのような方法があるだろうか。
「T字カミソリの場合は、絶対にシェービングクリームやジェルを使用してください。カミソリのヘッド部分が可動式のタイプもありますが、力を入れて剃ってしまうと、髭の流れを無視して剃ることになり、肌への負担が大きくなってしまうので要注意です。顔の輪郭に刃を沿わせるくらいがちょうどいいと思います。
そして、これは電動シェーバーでも言えることですが、剃った後は保湿クリームなどを使うことが、肌荒れを防ぐために効果的です。毎日髭を剃ると、肌へのダメージが蓄積されていってしまうので、仕事がお休みの日など、お酒の休肝日のように髭を剃らない日をつくるというのもいいでしょう」(同)
T字カミソリの刃の替えどき、電動シェーバーのお手入れ方法
T字カミソリの替えどきや、電動シェーバーの手入れ方法についても聞いた。
「大前提ですが、T字カミソリの刃は消耗品だと覚えておきましょう。髭の濃さなどで個人差はありますが、大体2週間くらいで新しい刃に替えるといいと思います。切れ味が落ちた刃では力を入れないと髭が剃れず、肌を荒らしかねません。
当然、電動シェーバーでも刃は劣化しますので、メーカーが取り扱い説明書などに記載している推奨通りに、一定期間が経過したら刃の交換をすることを忘れないようにしてください。メーカーによっては刃の手入れ用のオイルなどもあるため、そういったものでアフターケアをするといいと思います。水洗いできる電動シェーバーの場合は使用後に毎回洗浄をおすすめします。汚れたシェーバーでの髭剃りは皮膚に細菌を植え付けるかたちになり、吹き出物の原因になるからです」(同)
森原氏が特に強調して提言していたのが、「髭剃りはとにかく水分で髭を柔らかくし、肌が清潔な状態で時間をかけて丁寧に剃る」ということだ。忙しく限られた時間しかない朝に毎日髭剃りをする方も多いとは思うが、カミソリ負けなどの肌荒れを起こさないようにするため、仮に肌荒れが起きてしまっても軽度で済ませるために、この提言はできるだけ守りたいところだ。
(文=A4studio)