あなたはどんなベッドで寝ると、“最高の睡眠”が手に入ると思いますか?
最近では、寝具メーカーがしのぎを削って寝具開発を行っています。今回は、その寝具の開発段階で起こった、驚くべき実験についてお話したいと思います。
ミニマリストで有名な「しぶさん」(著作家、YouTuber)をはじめ、いろんな方が「床で寝ても高級マットレスで寝ても変わりがない、という実験結果があるから床で寝てみよう」と主張する記事や動画を見かけます。
スタンフォード大学に世界初の睡眠障害センターを設立し、睡眠研究の世界で知らない人はいない睡眠学の権威、ウィリアム・デメント博士は、次のような実験を行いました。一見、都市伝説のような内容ですが、本当に行われました。
デメント博士は、ある寝具メーカーから、開発した高級マットレスと一般的なマットレスで、どれくらい睡眠の質が変わるのかを比べてほしいと依頼されたそうです。しかし、デメント博士は、この2つだけではあまり差が出ないかもしれないと考え、「コンクリートの床で寝る」という極端な条件も加えて、3つのパターンで比較実験を行ったのです。
その結果、驚くべきことに「高級マットレス」「一般的なマットレス」「コンクリートの床」の3つの条件で、睡眠の質にまったく差がなかったのです。普通なら、こういった不都合な真実は表に出ないのですが、少し茶目っ気があるというか真面目というか、デメント博士はそのまま世間に公表してしまいました。その後、依頼した寝具メーカーが激怒して研究が打ち切られたそうです。
ちなみに、この研究結果を聞いて、多くの方がマットレス無しで寝ることにチャレンジしていますが、筆者が色々な動画やブログを確認した限り、ほとんどの人が「マットレスで寝たほうが断然良い」と答えているようです。
実際に、最近の寝具メーカーの研究では、主にアスリート対象が多いのですが、疲労の回復はマットレスで違いがあることがわかってきています(参考:株式会社エアウィーヴとスタンフォード大学との共同研究)。
ではなぜ、デメント博士のような実験結果になってしまったのでしょうか。デメント博士は後に自身の著書で、実験には若干の落ち度があったと後悔しています。その内容は、拙著『働くあなたの快眠地図』のコラムにも書いていますが、デメント博士は何に後悔したのでしょうか(ヒントは下のイラストです)。
(文=角谷リョウ/パフォーマンスコーチ)