10代の頃の思春期のニキビと違い、20代以降にできるニキビを「大人ニキビ」といいます。思春期は第二次性徴に伴いホルモンの分泌が増え、それとともに皮脂が増えていくことが原因とされていますが、大人ニキビは生活習慣の乱れにより皮膚代謝が落ちてしまい、古い角質が毛穴に詰まることで起こります。詰まった角質に対して炎症が起こり、赤いポツポツとしたものが出来るわけです。
生活習慣と一言でいっても、睡眠不足、栄養不足、不規則な生活、過労といったことが複雑に絡んでいますので、これさえやれば大丈夫というものはありません。しかしながら、「これさえやれば大丈夫」といった商品が多く出て問題となっています。特に化粧品業界においてそういった商品が乱立しているため、安易に飛びついてしまい、思う結果が得られないばかりか、皮膚がヒリヒリしたり赤くなったりする症状が出てしまうことがあります。
大人ニキビ用化粧品
大人ニキビは古い角質が詰まることが原因なので、その古い角質を取り除いてしまおうという商品があります。ピーリング剤といわれているものです。これを適切に使うと、古い角質がクリアになります。しかしながら、皮膚をはがす効果が行き過ぎてしまうと、バリア機能も落ちてしまうため、皮膚が荒れてしまいヒリヒリしてしまうといった症状が出ることがあります。
ビタミンCもニキビ用化粧品の定番とされる成分です。ビタミンCは水溶性ビタミンであり、皮脂膜というバリアを突き抜けて皮膚の中に入ることはできません。水は脂ではじかれるからです。そのため、ニキビ用化粧品ではビタミンCは皮脂膜を通過できるように「アレンジ」されており、このアレンジ力により各社の性能が変わってくるということです。
ビタミンCは皮脂の酸化を防ぎます。酸化した皮脂は炎症物質にとってターゲットとなるため、皮膚の炎症が起こります。ニキビが赤く盛り上がるような状態をつくるのです。余談になりますが、血管内にある酸化した脂肪分が「プラーク」と呼ばれていて、これが炎症を引き起こし血管内皮が赤く肥大するのです。血管が細くなり血液の流れが悪くなっている状態です。ビタミンCは色素を薄くする効果があるため、炎症によって起こった色素沈着においてこれを薄くしていきます。
最後に保湿です。乾燥によって角質がポロポロになっていると、これが皮膚に詰まってニキビを引き起こします。保湿に対する商品も多数ありますので、使用感も含めて選ぶようにします。
自分の肌質によって、ピーリング剤が適しているのか、ビタミンCが適しているのか、保湿が適しているのか、どれとどれを組み合わせるのかということを選ばないと、逆効果となるのです。
ニキビの治療法としては皮膚科での受診が第一選択
大人ニキビに化粧品のみで対応する人が多いですが、思うような結果が出ないばかりか悪化させる人が多発しています。また、治らないニキビに対して高額な化粧品を勧めてくる人もいますが、治療への最短方法は「標準治療」です。標準治療とは、数々のデータに基づき多くの人にとって最も適切で効果的な方法として確立されたものです。しかも保険が適用されるため、自己負担が安くて済みます。「ニキビは病気ではない」「ニキビくらいで病院に行くなんて大げさ」と思わずに皮膚科に行くようにしてください。ちなみにニキビは「尋常性ざ瘡」と呼ばれる皮膚の病気です。
皮膚科に行く時間がないという方はセルフメディケーションである程度、症状を緩和させることは可能ですが、標準治療に比べると効果は落ちます。塗り薬の使える種類が少ないため、できることが限られてしまいます。市販の塗り薬は「クレアラシル」「アクネス」に代表される「イオウ」を含む薬です。皮脂を取り除き、毛穴を掃除する効果があります。しかしながら、大人ニキビに使うと皮脂を取り除きすぎてしまい、皮膚が乾燥してポロポロになってしまうといった欠点があります。
また「イブプロフェンピコノール」を含む薬が市販では第一選択となりますが、この成分は理論上、炎症を抑える効果がありますが、「効かない」という評判が強いです。市販薬には限界があるのです。皮膚代謝の改善は市販のビタミン剤の得意分野であり、「チョコラBB」に代表される薬を長期間飲んでいると皮脂の状態が安定してきます。
日本皮膚科学会の「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」に書いてある、急性炎症期に最も推奨される抗菌薬による治療は、皮膚科に行かなければ受けられません。また急性期から維持期すべてにおいて推奨されている「アダパレン」(商品名:ディフェリンゲル)は、細胞の角質化を改善して毛穴を広げる作用があります。こうした画期的な薬が標準治療として使えます。だからこそ、皮膚科に行くのが第一選択なのです。
また、ピーリング作用と抗菌作用をあわせ持つ「過酸化ベンゾイル」(商品名:ベピオゲル)も推奨度Aです。ちなみにニキビ用化粧品の使用はガイドラインでC1です。つまり、「大きな効果があるわけではないけど、やってもいい」というレベルなのです。だからこそ、そうした化粧品に大金をつぎ込むのはやめるべきだと思っています。
(文=小谷寿美子/薬剤師)