NHK大河ドラマ『どうする家康』の主人公である徳川家康をはじめとした「将軍」。これはどんな地位だったのか。将軍は誰が決めて、何をするのか。歴史を紐解いていくと、くじ引きで決められた将軍もいれば、何もしなかったひ弱な将軍もいたようだ。
『「将軍」の日本史』(本郷和人著、中央公論新社刊)は将軍論を解説する一冊。東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏が、さまざまな史実を検討し、歴代の将軍たちを個別具体的にみながら、「将軍とは何か」という問いを考察し、紹介していく。
くじ引きで将軍を決める? その理由とは
将軍はどのように決められるのか。それは「天皇の任命」か「神の承認」か「家臣の合意」で決められる。このうちの「神の承認」でいえば、くじ引きで決められた将軍も存在する。
室町幕府4代将軍の足利義持は、自分の息子である5代将軍・足利義量が若くして亡くなったのち、自身も病に倒れ、その後継を自分で決めないまま亡くなってしまう。義持には義量以外に息子はいなかったが、4人の弟がいた。いずれも仏門に入っていたが、この4人の弟たちを候補に、彼らのうちの1人を次期将軍にしようということになる。
そして、守護大名たちが話し合った結果、石清水八幡宮でくじ引きをして決めることにしたのだ。守護大名の代表格だった畠山満家が、石清水八幡宮の社頭でそれぞれの候補者の名前を書いたくじを引き、幕府に戻って開封した。そうして選ばれたのが、6代将軍の足利義教だ。
くじ引きで将軍を決めてしまうとは驚きだが、実は一定の説得力を持つ方法だったようだ。くじを引いて決めたということは、神慮に委ねた、つまり神に判断を任せたということになる。八幡神は武士を守護する神。だから、石清水八幡宮でくじを引くというのは、それなりに理にかなっていたと考えられるのだ。
しかし、本郷氏はこのくじ引きに「疑い」の目を持って見ているようだ。その疑念はぜひ本を開いてみて確認してほしい。
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将軍の決め方や将軍の地位についてさまざまな角度から検証した本書。将軍について知ることで、大河ドラマだけでなく、歴史そのものの面白さを味わうことができるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。