脳出血で倒れ、失語症・右半身まひという後遺症を抱えた立命館アジア太平洋大学(APU)学長・ライフネット生命創業者の出口治明氏。72歳で生死に関わるような病気を患ってから懸命なリハビリを経てわずか1年という短期間で大学の学長職に復帰した。まさしく「人生最大の逆境」である。出口氏はこれをどう乗り越えたのか。
逆境にある時こそ歴史を学べ
『逆境を生き抜くための教養』(出口治明著、幻冬舎刊)では、出口治明氏が身をもって体験した逆境を生き抜くために役立つ物事の考え方や知識を紹介する。人の前に立ちはだかる逆境は、その大半が「小さな目」で見える環境の変化によるものだという。「大きな目」で見れば、どんな逆境にもいつか必ず終わりを迎える。だからこそ、逆境にさらされたときには、それが過ぎ去ったときのための準備を整えておくことが大切だ。
出口氏の場合、会社で左遷されたときには、仕事が暇になって生まれた時間を旅や読書に使っていたという。具体的な目的のために準備をしたわけではなかったが、結果的にはそれが還暦以降の人生に役立っている。
また、逆境にあるときこそ、歴史を学ぶことを出口氏は大切にしていた。歴史という過去の中には、現在の逆境を生き抜き、未来を変えるための勇気や希望の種がたくさん埋まっている。歴史を学べば、逆境がいつまでも続かないことがわかり、未来へ向けた勇気を持つことができるからだ。
順調に思えていた人生が逆境に転じたとき、そうなったのは自業自得だと受け止め、自分を責めてしまうこともある。けれど、順調から逆境への変化は、たまたまそういう巡り合わせになっただけで、自分の努力や工夫だけで止められるものではなく、「運」や「巡り合わせ」の要素があまりにも大きい。
逆に、逆境から順調の変化についても、努力や工夫が介在できる可能性はあまり大きくない。取り巻く環境はさまざまな運と偶然の要素が重なることで、良くも悪くもなるという。なので、目の前の逆境は、次の順調へ向けた準備期間だと考える。そう心得てやるべきこと、できることを続けて、状況が転じるのを待つ。運は人間の力でコントロールできないが、適応には関与の余地があるということだ。
気力や精神力も大事だが、それに加えて重要なのは知力だという。病という逆境から復活するまで、今までに読んだ1万冊以上の本から学んだ物事の考え方や知識などが役に立ったと、出口氏は述べる。仕事やプライベートで逆境になった際、どのように乗り越えればいいのか。出口氏の体験や考え方からヒントを得てはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。