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家賃3万円、出社は新幹線一本…東京勤務のまま富山に移住したら天国、狙い目は東北

取材・文=文月/A4studio、協力=濵松和夫/浜松建設代表取締役社長
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富山県の公式サイトより

 コロナ禍でリモートワークが普及したことをきっかけに、地方移住を検討する人が増加中だ。総務省が実施した「令和3年度における移住相談に関する調査結果」によれば、窓口、イベントなどを含んだ相談件数が約32万4000件にも上り、調査を開始した2015年度以降で最多という結果になっている。政府は27年度に都内と地方の転出入を均衡させつつ、東京圏から地方への移住者を年間1万人に増やす目標を掲げており、地方移住への関心は高まっているといえる。

 そんななか、7月にTwitter(現X)に投稿された以下ツイートが3.8万いいねを獲得するなど話題になった。

<東京から富山に移住した同僚
・家賃18万→3万
・海の幸が死ぬほどうまい
・近所の農家がタダで野菜くれる
・市内にいけばだいたいなんでもある
・出社時は北陸新幹線で一本
・飲みが減って健康的に
「年収半分になってもこの生活を続けたい」と言うぐらいだから相当満足度高そうで羨ましい>

 富山市は新幹線一本で東京まで行けるという交通の便のよさも特徴だ。たとえば、北陸新幹線「かがやき」号で富山駅から東京駅までかかる時間は約2時間10分。リモートワークで月一か月二、週一出社するだけであれば、十分に移住を検討してもよい距離感だろう。今の時代、自然豊かな地方で優雅にリモートワークをしながら、スローライフを満喫することは決して絵空事ではないため、富山以外にもおすすめの移住先を知りたいところだ。

 そこで今回は、株式会社浜松建設代表取締役社長であり、地方移住の専門家としても知られている濵松和夫氏に話を聞き、都内オフィスまで通うことができる、おすすめの移住先について考えてみたい。

週一の出社だと静岡、長野、栃木、群馬あたりが妥当か

 本題に入る前に、そもそもどのような地域が人気の移住先になっているのかを確認し、都内へと通勤できる地域を考えていきたい。下記は、地方移住の支援を行う「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」の発表した、2022年の窓口相談での移住希望先の都道府県ランキングトップ10だ。

1位:静岡県
2位:長野県
3位:栃木県
4位:山梨県
5位:福岡県
6位:広島県
7位:宮城県
8位:和歌山県
9位:群馬県
9位:神奈川県

 ランキングを見てみると、関東が3つ、中部が3つ、東北が1つランクイン。この7県のうち宮城県以外は、東京都庁から半径200km以内に大部分が収まっており、都内からの交通の便もそこまで悪くなさそうに思える。濱松氏は、以上の7自治体のうち、静岡県、長野県、栃木県、群馬県、神奈川県が週一の出社におすすめの地域だと語る。

「週一出社となるとできれば1時間以内か1時間30分ほどで東京まで移動できる地域が、心身に負担をかけず通勤できる距離だと思います。そう考えると、隣県の神奈川県はいわずもがな通いやすい。また静岡県は、静岡駅から東京駅までJR東海道新幹線『ひかり』で約1時間とスムーズに移動できる距離です。長野県は面積が大きいので一概にはいえませんが、長野駅から東京駅まででしたら、JR北陸新幹線『あさま』『はくたか』で1時間30分ほど、『かがやき』で1時間20分ほどとそこまで時間はかからないので、移住を検討してみてもよいでしょう。

 栃木県は、宇都宮駅から東京駅の場合ですと、JR東北新幹線『なすの』『やまびこ』『つばさ』で約50分。群馬県は高崎駅から東京駅までだと、JR上越新幹線『たにがわ』『とき』で50分~1時間ほどとなっており、1時間以下で通勤できる距離になっています」(濵松氏)

 なお山梨県は、新幹線が通っておらず、仮に在来線で甲府駅から東京駅まで向かおうとすると、特急「あずさ」で1時間40~50分ほどかかる計算となった。往復で最短3時間20分ほど時間を費やすことになるので、ギリギリ通えなくはない距離に思えるが、都内までの通勤時間を考慮すると、少々かかりすぎな気もする。

 濵松氏は、特に静岡県の熱海市付近が個人的におすすめしたい地域だと語る。

「熱海駅からはJR東海道新幹線『こだま』に乗れば約45分で東京駅に行くことができるので、都内までの交通の便は良好。熱海といえば、リゾート地のイメージが強いですが、都内に比べて気温の変動が小さく、過ごしやすい地域なので、移住者からの評判も高めです。

 また熱海では、古民家を中心とした空き家の増加が問題となっておりまして、市では積極的に空き家を有効活用するべく、対策に取り組んでいます。全体的に空き家は老朽化が進んでいるものの、都内の物件より格安、かつ広い空き家が混在しているので、思わぬお宝を発見できる可能性もあります。リノベーションも盛んでして、自分好みに室内をカスタマイズできるのも大きな魅力。これらの理由から、古い建物でも構わない方は移住先として熱海はかなりおすすめでしょう」(同)

月一、二の出社だと東北や北陸への移住も夢ではない?

 では月一、二で出社するとなると、どこの地域がおすすめなのか。

「月一や月二程度の出社となると、そこまで頻繁に都内に出てくる必要はないので、片道2~3時間ぐらいかかっても平気な方が多いはず。そこで検討してほしいのが、東北です。宮城県は都庁から宮城県庁まで一般道で約366kmと直線距離は遠いですが、JR東北新幹線経由で宮城県の仙台駅から東京駅まで移動するとなると『やまびこ』で約2時間10分、『はやぶさ』『こまち』で約1時間30分と実はそこまで時間を要しません。朝6時、7時台の時間は『やまびこ』の本数が多いですが、時間帯を合わせれば『はやぶさ』の便で出勤することもできるので、週一の出社も視野に入れられるでしょう。なお岩手県の盛岡駅から東京駅までは、同じく『やまびこ』で3時間半ほどとなっています。

 また北陸3県もおすすめ。たとえば、金沢駅から東京駅までは、JR北陸新幹線『かがやき』で約2時間30分、『はくたか』で約3時間10分と時間はかかりますが、始業時間が遅めの会社で、深夜台の帰宅でも構わない方であれば、なんとか帰宅できる距離ですね」(同)

 東北となると、移住の現実的なラインとしては、東北新幹線が通る福島県、宮城県、岩手県あたりまでが無難だろうか。宮城県仙台市ともなれば、人口100万人クラスの大都市となり、商業施設数も多いため、ショッピングや飲食にも困らなさそうである。

 北陸3県は、自然はもちろん、かにやえびなどの海の幸を堪能できるところも嬉しいが、子育てがしやすい環境であるところにも注目したい。厚生労働省が発表した22年度の「保育所等関連状況取りまとめ」によれば、同年4月現在で北陸3県の待機児童は0と、保育所への預け入りがしやすい環境であることがわかる。総務省実施の「統計でみる都道府県のすがた2023」によれば、人口10万人あたりの病院数は全国平均5.7に対し、富山県が8.4、石川県が6.9、福井県が7.4と高水準。子どもの体調が優れない場合でも安心して病院に駆け込めるだろう。

地方は公共交通がもろい…移住の際のデメリットや注意点

 もちろん地方移住はメリットばかりではない。思い描いていた地方移住とは異なり、デメリットも少なくないのが実情だ。

「まず都内に比べて、公共交通機関が整備されておらず、運賃も割高です。そして住む地域によっては、電車の待ち時間だけで1時間ということも珍しくないので、車の所有はほぼ必須。また都内に比べて、飲食店の数も少ない傾向にあり、外食がしにくいところも欠点でしょう。

 住民との距離感が近くなりやすいのも人によっては評価が分かれるところ。地域の人々とのコミュニケーションを好む方であれば問題はありませんが、隣の人間が誰かわからなくても生活に支障をきたさない都会的な人間関係がタイプであれば、地方に向いているとは言いづらいです。地方は都内とまったくライフスタイルの基盤が違う場所ですので、ある程度都内の暮らしと齟齬が発生することは覚悟しなければいけません」(同)

 また通勤にかかる交通費もネックだ。仮に熱海駅から週一で東京駅まで通うとなると、自由席の新幹線で片道3740円かかる(自由席の場合)。これを往復、かつ週4日で移動するとなると1週間当たり2万9920円。かなり高めに感じられる金額かもしれない。一方で月一出社の場合だと、熱海駅から東京駅までの往復分だと7480円なので安上がり。ただし都内からより遠くなる場合はまた事情が異なる。東京駅を終点として新幹線で通勤する場合、仙台駅からは往復で2万3220円、金沢駅からは2万7700円と決して安くはない。交通費をすべて会社が負担してくれるならばよいが、月の支給費に限度がある場合、ある程度の自己負担は覚悟しなければいけないだろう。

 後悔しない地方移住を成し遂げるためには、入念な情報収集が必須だが、移住前にリサーチしておくべきことは何か。

「まずは移住を希望する地方に何度も足を運ぶか、もしくは長期滞在してみて、その地域の雰囲気や風土を肌で感じ取り、メリット、デメリットそれぞれを把握することが大切。祭りやイベントに積極的に参加してみるのも手です。旅行感覚で2、3回訪れただけでは、その地域の住みやすさはわからず、移住の欠点が見えてきませんので、たとえば1カ月ぐらい滞在してみるといいかもしれません。自治体では、お試し居住用のアパートや空き家を提供しているところもあり、滞在用の費用を負担してくれるケースもあるので、移住を考える際はぜひ利用を検討してみましょう」(同)

(取材・文=文月/A4studio、協力=濵松和夫/浜松建設代表取締役社長)

濵松和夫/株式会社浜松建設代表取締役社長

濵松和夫/株式会社浜松建設代表取締役社長

2002年に長崎・森山町に本社設立。材木屋から工務店を立ち上げ、本物の「木の家づくり」を提供。また3000坪のみかん畑だった場所に自ら木を植えて造った「風の森」は、県内外を問わず、森の中の工務店として話題に。
風の森には隠れ家カフェのほか、雑貨店、セレクトショップ、ガーデンショップなど、雑木林をテーマに、樹木や植栽一体の住宅・店舗も手掛け「暮らしかたの提案」を続けている。
数々の木造住宅賞を受賞。テレビ、ラジオでも住宅コメンテーターとして活躍しており、方言口調の親しみやすいコメントが人気。
浜松建設ホームページ

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