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過去に西氏の授業を受けた総生徒数は約20万人以上、そのうち、東大・京大合格者は実に約3000人にも及び、時に放送コードぎりぎりの雑談も交えながら、「無用なテクニックに頼らず、常に原理原則に立ち返る、丁寧な授業」が、多くの生徒の支持を受けている。
このたび一般読者向けの著書『情報以前の知的作法 踊らされるな、自ら踊れ』(講談社)を上梓した西氏に、
「東大と京大の求める人材の違い」
「伸びる生徒の共通点、伸びない生徒の共通点」
「勉強することの楽しさを、生徒に“感染”させるとは?」
「受験勉強の経験は、将来どのように役に立つのか?」
「論理的思考を身につける方法」
などについて聞いた。
――西さんは長年、東大、京大志望者向けの英語クラスを担当されていますが、東大が求める学生と、京大が求める学生に、明確な違いはあるのでしょうか?
西きょうじ氏(以下、西) ありますね。京大の人たちは、「実際に社会を動かす政治家や官僚、経営者は東大が輩出すればいい。だから自分たちは学問に関しては徹底的に基礎研究をやりましょう」と考えている節があります(笑)。確かに、東大出身の官僚や政治家、経営者は多いですが、京大出身者は少ないように思われます。
――そういう違いというのは、両校の英語の入試問題のつくりにも表れていたりするのでしょうか?
西 ええ。東大の入試問題は「短時間で、いかに論理的に解答を導き出すか」が問われるつくりになっていて、情報処理型でスピードを要求しますが、わりとオーソドックスです。一方、京大の入試問題は、最近少し変わってきましたが、原則的には英文をとにかく日本語に訳しなさいという問題です。しかも「ただ訳せ」というだけではなく、思考した結果を正確に表現できないと訳せないような部分に、下線を引いてきます。日本の大学全体の中でも、京大の入試問題はかなり異質です。
――難関大学に受かる生徒に、共通点はありますか?
西 あくまで相対的にですが、体の姿勢の良い子は伸びます。もちろんそれまでの勉強量もありますから、姿勢の良い子すべてが難関大学へ行けるわけではないです。ですが、その時点からの伸び代という点では、姿勢の良い子が伸びますね。
というのも、姿勢が良いというのは、骨盤が入り、肩が後ろにいくので、横隔膜が開き、呼吸が深くなる。そうすると人の話をきちんと聞くことができるんです。本書でも、聞く姿勢については詳しく言及しています。
――逆に、成績が伸びない子の共通点はありますか?
西 余計なことを考える子は、受験に失敗してしまうことが多いですね。今、予備校での2学期のテーマは「な~んにも考えない強さ」。例えば、野球のバッターを考えてみます。3割打者は、実は7割は打てない。でも、バッターボックスに入るとき、自分は7割打てないとは考えず、3割の確率で打てると考える。生徒に対し、普段は視野を広く持ちなさいと言っていますが、こと受験という短期決戦では、視野を狭くして通ることしか考えさせない。また、通ることを想定して考えさせる。そうでないと「勉強が間に合わない」「落ちたらどうしよう」ということを考えて始めてしまう。
そういう不安がどんどん大きくなると、勉強時間の中で、その不安について考える割合が大きくなってしまうんです。こういうふうになってしまう生徒は、真面目な生徒に多いです。真面目な生徒で、勉強が伸びない生徒は、適当に勉強することができない。例えば、受験間近の冬の時期に、時間的には難しいにもかかわらず、真面目な生徒は勉強する単語をすべて覚えようとする。