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高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

あの超優良・成長企業、なぜ突然の破綻?中国進出や粉飾がアダ…偽装の代償

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役
あの超優良・成長企業、なぜ突然の破綻?中国進出や粉飾がアダ…偽装の代償の画像1「株主の皆様へのお知らせ」(「江守グループホールディングス株式会社 HP」より)

 2015年も残すところわずかとなった。メディアではこぞって今年の回顧が行われており、経済面でも来年への期待と不安が入り混じるかたちとなっている。

 毎年恒例の「2015ユーキャン新語・流行語大賞」は「爆買い」と「トリプルスリー」に決まったが、爆買いはともかくトリプルスリーが選ばれたことには首をかしげる向きも多い。

 今年の経済を代表したキーワードは、やはり「偽装」だろう。大手企業の偽装が相次ぎ発覚し、そして中小では個人の社員レベルの偽装によって倒産に至った会社もあった。本連載の今年最後として、これらを振り返ってみる。

東芝、VW、旭化成建材

あの超優良・成長企業、なぜ突然の破綻?中国進出や粉飾がアダ…偽装の代償の画像2

 東芝の複数年度にわたる不正会計は、信用度の毀損、過去の決算も含めた業績修正、役員への賠償請求、企業組織そのもののドラスティックな再編といまだに出口が見えない。VW(フォルクスワーゲン)や旭化成建材も事業の本質に関わる部分におけるデータ改竄であり、根が深い。 

 3社とも業界大手で、特に東芝とVWは国際的にも知名度が高い企業だけに持ちこたえているが、一般企業なら倒産に至りかねないケースである。逆にいえば、倒産に匹敵する痛みをこれから3社は負うことになる。ただ体力があるから倒産しないだけの話である。

 思えば、今年起きた倒産の事例でも、こうした偽装によるケースが何件もあった。本来ならば堅調な業績だったのに、偽装によって倒産したケースだ。東芝やVWのように体力がないため倒産に直結してしまった例は少なくない。

江守グループホールディングス

 本連載でも5月に取り上げたが、そのひとつは江守グループホールディングス(GHD)である。

 化学品・電子材料等の販売を行う事業会社、江守商事を中核とする上場会社の江守GHDは、経営悪化から4月30日付で民事再生法適用を申請、事実上倒産した。

 江守GHDはもともと成長路線に乗った安定企業だった。10年3月期に657億円だった売上高は毎年伸びて14年3月期には2089億円になり、最終利益も18億円から54億円に拡大、安定成長が続いており、株式市場でも推奨銘柄に挙げられるぐらいだった。しかし中国子会社における架空売り上げが発覚、業績修正とともに、一気に経営破綻に追い込まれた。

 その後上場を廃止して、スポンサーを得て再出発しているが、偽装が倒産に直接つながった例である。

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

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