世界のPC市場における東芝は、5本の指には入らないとはいえトップ10には入っており、日本のPCメーカーとしては最大のシェアがある。その東芝が海外向けを縮小するということは、すなわちソニーに続いてまたひとつ日本ブランドのPCが消えることを意味する。
製品ラインアップも削減する。東芝は自社で設計する高付加価値モデルに加えて、安価な製品については台湾などODM(委託者のブランドでの製品設計・生産)企業に製品開発や生産を委託してきた。だが不正会計問題では、東芝本体が仕入れた部品をODMに販売し、後に完成品のPCとして買い戻すという「バイセル取引」による利益水増しが発覚。これに対して東芝は、ODM企業の利用自体を廃止するという。
その結果見えてくるのは、PC事業の大幅な規模縮小だ。製品ラインアップ数は現在の3分の1以下にまで削減。海外拠点は13から4拠点に縮小、人員削減はPC事業だけで3割に当たる1300人に及ぶという。計画通りなら16年4月1日には構造改革を終えたPC新会社が誕生することになるが、世界トップ10から脱落する可能性は高い。
国内PC連合でNECレノボへの対抗なるか
東芝は構造改革プランのなかで「他社との事業再編も視野に入れる」と説明しており、以前から新聞報道などで話題になってきた富士通とのPC事業統合の可能性について、暗に示唆している。
対する富士通は、16年春を目処にPC事業の子会社化を進めており、2月1日には100%出資の子会社「富士通クライアントコンピューティング」が誕生する。富士通・東芝の両社からPC事業の切り離しが完了した暁には、これら2つのPC子会社の統合も見えてくる。実現すれば、10年に富士通が設立した東芝との合弁会社、富士通東芝モバイルコミュニケーションズ(現富士通モバイルコミュニケーションズ)の再来になりそうだ。
基本戦略は、富士通と東芝がそれぞれに強みとしている技術や市場を合体させ、重複する部分を削ぎ落とすことで、国内市場で首位を独走するNECレノボ・ジャパングループに対抗することが考えられる。IDCによる最新の国内PC出荷台数調査では、NECレノボのシェア29.4%に対し、富士通・東芝を合計すると29.5%になるからだ。
海外戦略はどうだろうか。富士通はドイツに大きな拠点があり、欧州の法人市場に強いという特徴がある。一方の東芝は北米で強く、世界シェアは富士通より高いとみられる。地域差がある富士通と東芝のブランド力を、どう整合させていくかが鍵になるだろう。
(文=山口健太/ITジャーナリスト)