ミドルクラスの端末を増やす戦略は受け入れられるか
もうひとつ、学割と共に従来の戦略との違いが明確に打ち出されたのが、端末に関する戦略である。auは今回の春商戦に向けて、スマートフォン2機種、タブレット1機種、フィーチャーフォン1機種を発表しているが、なかでも注目されるのは「Qua」シリーズである。
auオリジナルの「Qua」というブランドを付けた端末は、これまでにも京セラ製の8インチタブレット「Qua tab 01」が発表されているが、今回の春商戦に向けて、新たに10インチのファーウェイ製「Qua tab 02」が発表されたほか、京セラ製のスマートフォン「Qua phone」も発表がなされている。
そしてこのQuaシリーズは、いずれも購入しやすい価格や、使いやすさを強く意識したブランドとして位置づけられており、今回投入された2機種も性能的に見ればミドル~ミドルハイクラスといえるものだ。iPhoneなどのハイエンドモデルと比べると性能面で見劣りはするものの、スマートフォン自体の進化もあって、3Dゲーム等を遊ぶのでなければ十分快適に利用できるし、価格も実質1~2万円、一括で4~5万程度と安価に抑えられている。
auは昨年より、春商戦に向けてはミドルクラスの性能のモデルを提供する傾向が強まっていたが、今年はQuaシリーズに重点を置くことで、ミドルクラス端末への注力を一層明確にしたといえよう。その背景にあるのは、昨年末に実施された総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」で、過剰な販売奨励金による、0円を切る料金での販売に“待った”がかかったことを受け、販売奨励金を減らすべく調達する端末自体の価格を抑えたい狙いが大きいと見られる。
そうしたことから今後は、auだけでなくほかのキャリアも、性能を抑えたミドルクラスのスマートフォン投入を積極化してくると考えられる。iPhoneが圧倒的な強さを誇り、ハイエンドモデルを求める傾向が強い日本市場において、そうしたミドルクラスの端末がユーザーの支持を得られるかどうかは、今年の大きなテーマになってくるといえそうだ。
(文=佐野正弘/ITライター)