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JR東日本の痴漢通報アプリは被害者の救世主となるか?車内で車掌に通知、冤罪増加の懸念も

文=藤野ゆり/清談社
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JR埼京線の車両(「Wikipedia」より)

 恐怖や恥ずかしさによって被害を訴えられない人も少なくない「痴漢」。声を上げられない被害者のために、JR東日本がスマホで使える「痴漢通報アプリ」の実証実験をスタートした。痴漢行為の7割は電車内や駅構内で行われているという。アプリの登場によって、電車の痴漢被害を減らすことができるのか。それとも、新たな“トラブル”を生み出してしまうのだろうか。

発覚している痴漢犯罪は氷山の一角か

 警視庁発表の「都内における性犯罪」によると、2017年の痴漢(迷惑防止条例違反)発生件数は約1750件。そのうち約3割が午前7~9時に集中して発生しており、年齢別の被害状況では7割以上を10代・20代が占めている。電車が混雑しやすい通勤通学時間帯に若い女性が狙われるケースが多いことがわかる。

「これまで女性専用車両の設置、車内でのSOSボタンの設置、車内防犯カメラ設置、また警察と連携して痴漢撲滅キャンペーンを行うなど対策をしてきましたが、なかなか抜本的な解決には至りませんでした。痴漢被害を訴えられず、発覚に至っていないケースも相当数あると認識しています」

 そう話すのは、JR東日本の広報担当者だ。1月にセコムが発表した12~39歳の女性200人を対象にした「女性の『安全・安心』に関する意識調査」では、「実際に犯罪被害にあったことがある」と回答した人は32.5%。女性のおよそ3人に1人は何かしらの犯罪被害に遭っているという計算になる。犯罪の内訳は「痴漢」が最多で21.5%、ついで「ストーカー」や「ネットでのトラブル・SNS悪用」「盗撮」などが挙がった。

 しかし、これらの犯罪被害に遭った女性にどのような対応をしたか聞いたところ、「何もできなかった」と答えた人が49%と半数近い。次点で「逃げた」が33.3%。「大声をあげた」「警察や駅員に通報したり、犯人を突き出した」「周囲に助けを求めた」など、実際に行動を起こした人は少なかった。

 犯罪被害に対して声を上げられない女性が多いのは、なぜなのか。前述の意識調査で「護身グッズや防犯グッズを活用した」と回答した人は0人。常に護身用のアイテムを持ち歩く女性は少なく、防犯グッズの導入や活用は浸透していない印象だ。実際に防犯対策用のアイテムを持っているかどうかが、犯罪被害に遭った際の行動を左右することは間違いないだろう。

2月に埼京線で実証実験を開始

 そこで期待されているのが、誰でも常に持ち歩けて手軽に使えるスマホによる防犯対策だ。JR東日本は、2月に痴漢通報アプリの実証実験を実施すると発表した。前述のJR東日本広報担当者は、その背景についてこう話す。

「声を上げにくかった痴漢被害が、より通報しやすくすることで、痴漢抑制を期待できるのではないかと思っています」

 アプリの使用方法は簡単だ。専用アプリをスマホにインストールし、痴漢被害に遭った際に車内で通報ボタンを押すと、車掌のタブレット端末に通知が届く。車掌はこの通知に基づき、車内放送で注意換気を促すという。また、利用者の登録により何号車で痴漢通報があったのかが即座にわかるようになっている。JR東日本は「痴漢が多い」路線として挙げられる埼京線において、2月25日からアプリの実証実験を開始した。

「実証実験の第一ステップのモニター数は計200名ほど。スマホであれば、車内でも周囲や加害者に悟られずに通報することができます。検証に協力していただいたモニターの反応や要望などを踏まえ、さらに実用化に向けて、効果的な改良を進めているところです」(JR東日本の広報担当者)

冤罪が増加する懸念も

 痴漢被害者が声を出さずに通報できる画期的なアプリが実用化されれば、これまで以上に痴漢を検挙しやすくなることは間違いないだろう。しかし、一方で気になるのが「冤罪」被害だ。

 近年、メディアで盛んに取り上げられるようになった「痴漢冤罪」。身に覚えがなくても「痴漢」として捕まってしまうと、身の潔白を証明するのが難しい。スマホの痴漢通報アプリは、その手軽さゆえに“いたずら”が発生する可能性もあるのではないだろうか。

「アプリを悪用した『いたずら』による通報が懸念されますが、インストールする際には個人が特定できる情報を登録していただきます。ユーザー情報の登録により、悪用は防げると考えております。今後、本格的に実用化する際は、ほかにも対策がないか検討していきたいと考えています」(同)

 通報アプリが痴漢の抜本的解決につながるのか、それとも新たな“トラブル”の火種となるのか。実用化に向けて、注目が集まりそうだ。

(文=藤野ゆり/清談社)

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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