連続テレビドラマ『日曜劇場 半沢直樹』(TBS系)の第3話の描写が物議を呼んでいる。劇中、IT業界の雄・スパイラルの社長、瀬名洋介(尾上松也)が「SREチームここに呼んで!これからセントラル証券のクラウドにバックドア仕込むよ!」というセリフを発するのだが、これが業界関係者から失笑されている。
鉄壁のセキリュティを破り、バックドアをつくる?
今回の放送では、東京セントラル証券の営業企画部部長、半沢直樹(堺雅人)が大手IT企業・電脳雑伎集団の買収相手、スパイラルとアドバイザー契約を正式に締結。電脳雑伎集団とアドバイザリー契約を結ぶ親会社の東京中央銀行との対立が激化していた。窮余の策として、半沢らはスパイラルの瀬名社長に「逆買収」を提案して情勢の逆転を図ろうとする。
そんな中、証券取引等監視委員会が東京セントラル証券に立ち入り検査に入る。監視委は半沢たちの逆買収計画書を狙い、パソコンからゴミ箱の中まで徹底的に調べつくし、クラウド上の隠しファイルを探す。半沢から連絡を受けた瀬名は、天才プログラマーの高坂(吉沢亮)に指示し、自社が東京セントラル証券に提供した「鉄壁のセキリュティ」を持つシステムから、問題のデータフォルダを消去しようと試みる――という流れだった。
ここで、記事文頭の「SREチームここに呼んで!これからセントラル証券のクラウドにバックドア仕込むよ!」が出てくるのだが、これに対しTwitter上で以下のようなツッコミが相次いだ。
「バックドア仕込むの簡単すぎからの、重要書類コマンドプロンプトで削除どーんはおもろすぎ」(原文ママ、以下同)
「SRE→Site Reliability Engineering バックドアを仕込むようなチームではありません」
「証券会社の部長が 他社の人間にハッキングさせてバックドア仕掛けさせるって冷静に考えると頭おかしいよね」
「バックドアを後から仕込めるようなシステムは不良品」
ちなみにバックドアとはソフトウェアやシステムの一部として管理者や利用者に気付かれないよう秘密裏に仕込まれた、遠隔操作のための接続窓口のことだ。今回の描写は実際どうなのか。金融機関勤務のSEは次のように語る。
「どんな情勢下であっても、バックドアをつけられる脆弱性を残しておくような製品を提供すること自体が、企業倫理としてアウトです。簡単に言うと、不良品だとわかっていて納品するようなものです。開発者だからできるとかそういうことではありません。
しかも、証券会社のシステムですよね? 絶対にありえません。しかも、外部の会社からリモートでモニタリングできている時点で、バックドア以前に問題があると思いますよ。しかも鉄壁のセキリュティという設定なのに、作品で描かれたパスワードはアルファベット6文字のみというお粗末さです。天才プログラマーはもフォルダではなく、なぜディレクトリを削除しないのかもよくわかりません。
またフィクションとはいえ、証券等取引委員会の検査で、その場でパソコンのパスワード破りを行うような行為はちょっと聞いたことがありません。明確な容疑のある警察のガサ入れですら、パソコンは持って帰って調べますよね……。検査で、そこまでできる法的な権限はなんなのでしょうか」
時代劇のような演出がウケている同ドラマだが、いちおう社会派ドラマを銘打つ以上、もう少し考証はしっかり練ったほうがいいかもしれない。
(文=編集部)