しかしながら、契約数拡大競争があまりに激化したことで、契約内容がよくわからないまま不要なフォトフレームやタブレット、Wi-Fiルーターなどを契約させられるトラブルが相次いだ。さらに乗り換え競争の激化でMNPでの乗り換えユーザーに対する万単位のキャッシュバック施策が横行したことが社会問題となった。そうしたことから行政側が、携帯電話業界の一連の競争環境を問題視するようになったのだ。
そこでTCAは14年4月、各社の契約数を毎月から四半期ごとの公表へと変更するなどして、競争の沈静化が急速に図られた。さらに15年に総務省が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」での議論の結果を受け、携帯電話端末の実質0円販売が事実上できなくなるなど、行政によって業界の商習慣に大きなメスが入れられたことで、キャリア同士の契約数競争は事実上ピリオドを打ったといえる。
携帯回線は必要な分だけ契約を
ゆえに最近では、複数の端末を無理に契約させるような施策は大幅に減少している。だが現在もなお、競争が激しかった時期に複数回線を契約しており、それに気が付かないまま利用し続けている人もいるかもしれない。
そうした人たちが、今後後悔しないためにしておくべきことは、まず現在の契約内容をしっかり見直しておくことだ。そしてもし、必要のない回線やサービスの契約があった場合は、たとえ解除料がかかったとしても素早く解約することをお勧めする。
また携帯電話の支払いに用いているクレジットカードや銀行口座の明細を、毎月こまめにチェックすることも忘れないようにしたい。もし契約したことに気づいていなくても、明細をしっかり確認さえしていれば、不要な料金の支払いにいち早く気づいてなんらかの対応を取ることができるだろう。
そして今後のために注意しておきたいのは、たとえ「お得だから」と言われても、必要のない回線契約はしないことだ。携帯電話は基本的に毎月料金を支払って利用するものなので、たとえそのときに得をしたと感じても、契約していることを忘れてしまえば、いずれ無駄な料金を延々と支払うことになってしまうからだ。キャンペーン施策に惑わされず、必要な回線を、必要な分だけ契約することが、結果的にお得へとつながることは覚えておきたい。
(文=佐野正弘/ITライター)