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松村太郎「米国発ビジネス&ITレポート」

アップル、米国内製造への動き急速化…確立した製造モデルを大転換の可能性

文=松村太郎/ITジャーナリスト

 投資額は100億ドルで、1万3000人の米国人を年収5万3000ドル(約600万円)で雇用するとした。また同州では間接的な雇用創出として2万2000人が新たな職に就くことを見込んでいる。

 鴻海はiPhoneなどのアップル製品を中国などで製造する製造委託先企業として知られている。前述の通り、アップルが直接工場をつくるわけではないが、アップルと非常に関係の深い鴻海による工場の建設になるという大方の予想が当たったかたちだ。ただし、記者会見の中でテリー・ゴウCEOは「アップル」や「iPhone」という具体的な名前には触れなかった。

シャープとアップルが注目する次世代ディスプレイとは?

 アップルがiPhone10周年を記念して発表するとみられているiPhone 8、もしくはiPhone Editionは、これまでの液晶ディスプレイに替わって有機ELディスプレイを採用するとみられている。そのサプライヤーとして選ばれたのは、スマートフォンで競合する韓国サムスン電子だ。

 ライバルであるということを差し引いても、サムスン以外に供給できる企業が存在していない現状は、アップルにとってリスクととらえるべきだ。2018年には韓国LGもサプライヤーとして加わるとみられているが、有機ELディスプレイの需要が逼迫し、製造のボトルネックになりかねない。

 そのため、スマートフォンやタブレットの鍵となるパーツである次世代ディスプレイ開発に、アップルが取り組む動機は充分にある。アップルはシリコンバレーの次世代ディスプレイ企業、LuxVue Technologyを買収しており、有機ELディスプレイよりも優れた省電力性を実現できる「マイクロLED」ディスプレイの研究開発に取り組んでいる。

 他方、シャープと同社を傘下に収める鴻海の動きも、「マイクロLED」に照準を合わせている。シャープは米国のマイクロLED技術を有する企業eLuxと業務提携を結んだ。eLuxは鴻海からも出資を受けており、シャープが持つLEDディスプレイの技術を生かせる布陣をつくり上げた。

 ウィスコンシン州に建設されるディスプレイ工場では、このマイクロLEDディスプレイが製造されることが予測でき、次世代のアップル製品にも採用されていくことが見込まれる。結果として、アップル製品の主要な構成要素であるディスプレイが米国で製造されるという布陣がつくられることになる。アップルにとっては、より優れたディスプレイ技術の製品を次世代製品に生かすことができるようになり、ライバルへのディスプレイパーツの依存度を下げつつ、競争優位性を高めることができる。

松村太郎/ITジャーナリスト

松村太郎/ITジャーナリスト

慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、ジャーナリストとして独立。テクノロジーとライフスタイルの関係を追いかける。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、テクノロジーの震源地であるサンフランシスコ・シリコンバレーを現地で取材した。
学校法人信学会 コードアカデミー高等学校

Twitter:@taromatsumura

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