会社の人事、脱ヒト依存→データ活用で驚きの成果…人事×マーケティング=HR tech
人事(HR:Human Resources)の透明化
人材の採用や育成、配置、モチベーションの向上など、人材に関する領域は「数字」のみで客観的に判断されることを嫌い、担当者間での議論で調整され、ブラックボックス化されてきた。平たくいえば、政治の世界で行われている「忖度(そんたく)」のようなものが企業の人事でも行われてきた。
数年前からビジネスのあらゆる領域が「ビッグデータ」により赤裸々に数値化・透明化されているなかでも、人に直接関係してくるナイーブな人事領域だけでは、何事もないかのように従来どおりの不透明な意思決定が行われてきた。
ところが、いつまでもこの人事領域が「聖域化」されているかというと、そうではない。現時点では、まだAdtech(広告領域のデジタル化)やFintech(金融領域でのデジタル化)ほどの広がりは見せていないものの、米国市場を中心にHR tech(人事領域のデジタル化)は着実に広がりつつある。雇用の流動性が高く、会社に対するロイヤリティが日本のように高くない米国企業にとって、自社に合った優秀な人材を発掘し、適切な業務や教育トレーニングを提供し、スキルやモチベーション、エンゲージメント(やりがいをもって主体的に働く状態)を向上させることが、何よりも自社の競争力を左右する要素だと考えられている。
一方、日本企業においてHR techは一部の先進的な企業が部分的に取り組んでいるような状態ではあるが、いわずもがな短期的にも長期的にも国内の労働人口が不足することは明らかであり、HR techに取り組む意義は非常に大きくなるだろう。そこで筆者が今年6月にサンフランシスコで参加した、HR techの関係者が集まる世界最大規模のカンファレンス「HR Tech World」を元に、最新のHR techがどのような方向に向かいつつあるかを紹介する。
データ活用による「エンゲージメント向上」
HR tech領域は、人材の採用・育成・配置・評価など裾野が広がっているが、もっとも熱いトピックはデータを基にした従業員のエンゲージメント向上だ。ちなみに、カンファレンスでは、米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員エンゲージメント(仕事への熱意度)調査が紹介されていたが、日本における「熱意あふれる社員」の割合はわずか6%しかないことがわかった。