会社の人事、脱ヒト依存→データ活用で驚きの成果…人事×マーケティング=HR tech
これは米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。昨今の日本では、長時間労働の見直しやテレワークなど「働き方の改善」が最重要テーマになっているが、近い将来エンゲージメントの向上、つまりは「働きがいの改善」も見過ごせない重要テーマになってくるだろう。では、このエンゲージメントを高めるために、HR techの領域でどのような取り組みが実践されているかを見ていこう。
従業員数が約3,000名のITサービスのA社では、ライバル企業と比較して従業員のエンゲージメントが低いことに頭を悩ませていた。そこで、同社は他社をベンチマークした上で成果報酬のインセンティブを増やす、研修トレーニングを充実させる、社食を無料にする、オフィスのインテリアを変えてカジュアルにするなど、有効と思しき試みを全社に展開したが目に見えた効果はなかった。それどころか、これらの施策によるコスト増加が収益を圧迫し、業績は下降線をたどるようになった。
しかし、これらの全社一律の施策をやめ、データに基づいたHR techのアプローチへと変更してから潮目が一気に変わった。もともとマーケティング領域において、ユーザーを利用金額やニーズに基づいてタイプ分けし、タイプに応じた販促施策やサービスを提供することを得意としていたA社は、そのアプローチを従業員のエンゲージメント向上に対しても応用できることに気がついた。
まずは、従業員に対して社内アンケートや面談を実施し、「何が働きがいの向上につながるか」といった観点から従業員を5つのタイプに分けた。そして、全社向けに行っていた施策のなかから、タイプ別にやる施策/やらない施策を選択し、もっとも効果の高そうな施策を提供するようにした。その結果、全社一律に施策を展開した場合と比べて、トータルの費用を抑えながらも従業員のエンゲージメントを向上させることに成功した。
これは、マーケティングのコミュニケーション戦略における、セグメント別の施策と同じことがいえる。生活者全体に同じメッセージ・同じメディアといった「一辺倒」の接触を図っていたところを、生活者の性・年代や購買スタイル、関心度合い等の違いによって雑誌・DM・ウェブなど施策を出し分けてアプローチすることで、セグメント別の施策の費用対効果を高め、全体として広告費の無駄が抑えられるというものだ。