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松村太郎「米国発ビジネス&ITレポート」

アップルがスマホ中毒防止機能、恐ろしいSNS利用実態…フェイスブック、価値低下の危機

文=松村太郎/ITジャーナリスト

明らかなフェイスブック叩き

 同様の機能はWWDC 2018の1カ月前、グーグルの開発者会議「Google I/O 2018」でも、今秋から配信されるスマホ向けOS「Android P」の新機能として紹介された。

 ただし、Android Pの新機能の有効性は高くない。Androidの世界のシェアは85%だが、最新バージョンのAndroidのシェアは9カ月経過時点でそのうちの6%で、すべての人が新OSの機能を享受できるわけではないからだ。

 とはいえ、グーグルに続きアップルもアプリの使用時間に制限をかけることができるようになり、スマホ中毒の改善をしたい人に、より具体的な対処手段を提供したことになる。

 その機能の多くはSNSアプリに注がれると考えられる。グーグルもウェブの検索広告によって収益を得ているため、あまり強くは示さなかったが、アップルはそうしたビジネスモデルをよくは思っていない。ユーザーのデータを広告価値に変える点も、プライバシーを訴えるアップルからすれば敵だ。

 スマホ中毒も、SNSアプリが原因の大半を占めるとアップルは考えているようだ。そもそもスマホ中毒防止を株主から訴えられた際、アップル自身は中毒化する原因となるSNSアプリをつくっていない上、それらのアプリからの収益もないことから、今回のスクリーンタイム機能はさほど抵抗感なく導入できたのではないだろうか。

 一方、使用時間の抑制の対象となるフェイスブックは、ユーザーの滞在時間の減少が広告価値の低下につながる懸念がある。まだスクリーンタイム機能が利用できるiOS 12はリリースされていないが、秋以降、フェイスブックのユーザー動向に変化がもたらされる可能性も捨てきれない。

フェイスブック批判はどこまで?

 フェイスブックのユーザーデータがCambridge Analytica(英データ分析会社)に流用された事件が発覚した直後の3月、アップルはiPad発表の教育イベントで、役員が語気を強めてユーザーの情報を売り物にする姿勢を批判した。もちろん、子どもや教育機関向けの製品発表の場で、アップルの配慮を知ってほしかったこと、それが製品価値を構成することのアピールだということはわかる。しかし、それにも増して、やや感情的にフェイスブックを批判している姿が気になった。

 そして今回は、ユーザーのスマホ利用の時間を制限し、その滞在時間を広告価値としてきたSNSアプリに対して圧力をかけるかたちとなった。一般的なアプリの使用時間は1回あたり1分程度で、一日当たり2時間、3時間を費やすものではなく、実用性の価値を与えているようなアプリに対しては、時間的に制限をかける必要性そのものがないのだ。

 今後、フェイスブックは2018年のトレンドであるスマホ中毒の是正と、これらに対応するアップルとグーグルの時間的な制限機能への対処を、いかに準備していくのか。また、我々にとって最適なテクノロジーとの関わり方は、どのようなかたちなのであろうか。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)

松村太郎/ITジャーナリスト

松村太郎/ITジャーナリスト

慶應義塾大学政策・メディア研究科卒業後、ジャーナリストとして独立。テクノロジーとライフスタイルの関係を追いかける。2011年より8年間、米国カリフォルニア州バークレーに住み、テクノロジーの震源地であるサンフランシスコ・シリコンバレーを現地で取材した。
学校法人信学会 コードアカデミー高等学校

Twitter:@taromatsumura

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