そして、日本でもQiの充電インフラの普及が徐々に始まっており、「ナチュラルローソン」の一部店舗のイートインコーナー、カフェ「プロント」の一部店舗、カラオケチェーン「ビッグエコー」の一部、マッサージチェーン「てもみん」の一部店舗などに設置されているが、正直まだまだこれからというところだろう。
●WiPowerの持つアドバンテージとは?
そんな状況のなか、クアルコムが「WiPower」という新しいワイヤレス充電の規格を開発し、製品化が近い。このWiPowerはQiとは異なる磁界共鳴方式を採用しており、ほぼ接していないと充電できないQiに対して、4センチ程度離れていても充電できるという特性を持っている。また、Qiが一度に1つのデバイスしか充電できないのに対して、複数のデバイスを同時に充電できる。このような利点を生かして、材質にもよるが、テーブルの裏などにWiPowerの充電装置を取り付ければ、簡単にワイヤレス充電テーブルを作ることが可能だ。
クアルコムは世界のスマートフォンが搭載するCPUの大部分を製造している有名な会社だが、このWiPowerデバイスはクアルコムだけが製品を作るのではなく、「A4WP」という団体によって普及を進め、技術をライセンス契約などで提供していくという。
ワイヤレス充電技術としてはQiが先行しているわけだが、その利便性からインフラの普及次第ではWiPowerがそれを抜く可能性もありそうだ。インフラ以前に、WiPower搭載のスマートフォンが普及するのかといった声が聞こえてきそうだが、A4WPはサムスンも参加しているので、世界的に大きなシェアを持つGALAXYシリーズなどが対応していくとすれば、それもあまり問題ではないだろう。
このように、遠くない未来には、ワイヤレス充電規格の戦いが見られるかもしれない。何にしても、スマートフォンをケーブルによる充電という呪縛から救ってくれるワイヤレス充電技術は要注目だ。
(文=一条真人/フリーライター)